青空の広がる日に�� ページ44
義勇さんが帰らない日はどんどん増える。
会いたいと思う気持ちが強くて時折泣きそうになる自分は随分弱くなった。
鬼殺隊の柱、彼が実力者である事を自覚せざるを得ず、怪我無く帰って来ると安心する。
冬が終わって春が来た。桜の季節に花見に行くことすら叶わず、菖蒲の蕾が膨らむ季節。
「あら？」
その日鴉が持ってきた手紙は、義勇さんからではなく「鱗滝左近次」と書かれていた。
一体どなたかしら、聞き覚えはあるものの、いまいち思い出せない。
私宛の手紙である事に変わりはなくいつも通り鴉にご飯をあげながら手紙を開く。
「……ああ、義勇さんのお師匠様」
確か御祝儀に沢山包んで下さった方だ。
一体私にどんな用事かと目を通しては、思わずぎゅっと手紙を握りしめてしまった。
手紙の内容を要約するならば、鬼となった妹を連れた少年が旦那の弟弟子になる。少年の妹が人を食った場合には自分と旦那が腹を斬って詫びる。私には申し訳ないし、起こり得ないと思っているが念の為覚悟して欲しい。
……ふざけないで欲しい。鬼を連れた、というのは以前義勇さんの心を動かした少年のことだろう。
どうして、兄弟子だからってあの人の命まで掛かるのだろうか。考えたくも無いのに嫌でも死が隣り合わせだと突き付けられる。
今だって会いたいと思っても会えないのに。一目顔を見るだけでいいと思っても叶わないのに。
どんどん死へと近付いていく。鬼狩りに行く度に、あの人が遠くなっていく。
「いっそ、私も鬼狩りにでもなればいいのかな」
ぽろ、と涙が溢れて手紙を胸に抱きしめる。傍で鴉が困ったように顔を覗くのが分かる。
平気だと声を掛けたいのに口から出るのは嗚咽ばかり。どうしてこんなに涙が出てくるんだろうか。
あいたいです、すきです、しなないで。そばにいたいです。
「ぎゆうさんの、ばかあ……」
「馬鹿とは、心外だ、」
顔をあげると少し薄汚れた羽織と隊服。
珍しく息を切らした様子の義勇さんがいて、そのままぎゅうっと私を抱きしめる。
あったかい。生きてる。幻覚でもなんでもない、本物の義勇さん。
「寂しかった」
「ああ。悪かった」
「うん。……腹を切る、というのは、」
「本当だ。俺にはその責任がある」
「義勇さんが死んだら私はどう生きたらいいんですか」
「……、…Aには、俺が居なくとも健やかでいて欲しい」
「あなたが好きなので難しいです」
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作者名：うに | 作成日時：2019年8月21日 22時
