夜にサヨナラ【冨岡義勇】 (ページ26)

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毒になるか薬になるか① ページ26

「まあまあ、お久し振りですね！」
「お久し振りです。その節は大変お世話になりました」

久し振りに会った胡蝶さんは今日も綺麗な人だった。

「ふふ、隠の方からお噂はかねがねお伺いしていますよ。仲睦まじいそうですね」
「それなりには。でもまだまだ夫婦の真似事に必死ですよ」

一度目はお見合い、二度目は結婚式。
それ以降直接会うことはあまりなく、今日は冨岡さんではなく隠の後藤さんに案内してもらった。
縫製係ではないけどここに来る用事があるというので連れてきてもらい今に至る。
庭に面した部屋でお茶を頂く。一体何の香りだろう、とても良い匂い。庭先から見える藤の花がとても綺麗。
うちの庭には花なんて無いし殺風景だ。義勇さんに頼んで朝顔ぐらいは育てても良いかなあ。

「でもお見合いの時と随分雰囲気が変わりましたよ」
「そうですか？」
「はい。あの時は”あ、本当に性格に難ありな方なんだな”と思いましたし」
「今もその通りです。人はそう簡単に変われませんもの」

お茶請けに、と出された練り切りはこれまた可愛らしいうさぎ型。
食べるのが勿体無いなあ、とは思いつつ口に運べば桜餡の甘じょっぱさが癖になる。
何処のお菓子なのか聞いてみよう。義勇さんと食べたい。

「けれど、冨岡さんが懸想してしまうような女性ってどんな方かずっと気になってたんですよね」
「あ、そうだ、私も気になってたんです。写真」
「そうなんですよ！ずっと持ち歩いていたしお見合いの日は前日からずっとソワソワしてて……ふふ、あの時の冨岡さんは面白かったです。
私も菱田屋さんが三姉妹とはお伺いしていたんですが、まさか贔屓にしてる店の娘さんが冨岡さんの恋煩いの相手とは想像できませんでした」

笑顔を絶やさない胡蝶さんは本当に面白かったと言わんばかりに笑う。
私もこのぐらい美人だったら良かった。でも普通に考えてこんな美人がそばにいるのに私を選んだ義勇さんは相当変わってる。おかしい。私が男なら確実にこのお姉さんに求婚しただろう。家柄も悪くないし、……内心比較されてやしないか不安になってきた。胡蝶さんは鬼殺隊のお仕事には私よりも詳しい。職への理解もある。