夜にサヨナラ【冨岡義勇】 (ページ25)

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時すでに遅し② ページ25

今必要なのは冷静な判断ではないでしょうか。義勇さん、手大きいなあ。そうじゃないよ私。お願いだから手を引かないで欲しい。
物凄く平然とした顔で不死川邸の敷居を跨いだ瞬間に流石に覚悟を決めた。
大丈夫、鬼が出ても義勇さんがいる。義勇さんは強いし。

「不死川」
「あ゛ぁ゛？！」
「ひっ」

義勇さん、その人鬼では？
元々悪い人相(かなり失礼)が更に悪くなっている。不死川様のほうが鬼のように怖い。思わず背中に隠れて羽織を握ってしまう。

「……んだ、冨岡ァ。お前か」
「妻が羽織と隊服を届けると言うので来た。鴉を送ったが」
「あ～…、ああ、今日か。悪ィな」

相変わらずの悪人面であるものの、さっきに比べたら表情も雰囲気も和らいだ。本当に怖かった。あんなの鬼柱だ。怖い。
義勇さんも何を考えているのか分からない、といった点では怖い人では在るものの、あんなに纏っている雰囲気は怖くない。……私が、見たこと無いだけかもしれないけど。

「ど、どうぞ。微調整も必要ならするので、今すぐ着てください」
「おう」

その場で隊服を脱いですぐに着て下さる。一応見ないように、義勇さんの後ろに隠れたままでいるものの衣擦れの音で支度を終えたかどうか分かる。
ひょい、と顔を出す頃には恐らく、いつもどおりの不死川様の着こなし方だった。なんでこの人こんなに肌を出してるんだろう。冬場とか寒くないんだろうか。

「嘘じゃねえな」
「何がですか」
「動きやすさが違う」
「そうでしょう！その隊服は不死川様の為だけに縫われたものなので！
和裁ではその動きやすさの認識が中々されないのですが洋服というのは顕著です、体の線に沿った服は見た目にも美しいんですよ！機能美、そして着ている人の魅力を一層…、……………」
「……」
「……」

恥ずかしさのあまり死にたい。こんなに殺してくれと願った日は初めてだった。

穴があるなら、入りたい。