夜にサヨナラ【冨岡義勇】 (ページ20)

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白を赤に染めあげる② ページ20

そうじゃないです、義勇さん。どうしていきなり私は抱き締められてるのか聞きたいので。
頭の中が一気に回転する。私はなにか気に触るような事を言っただろうか。いや、…多分、そんな事無いはず。
私も言葉足らずな部分のある人間だが、義勇さんに対しては気を遣ってる…方……のはず…。自信はない。
でも、心地良いなあ。義勇さん、あったかい。このまま寝そう。

「好きだ」
「え？！えあ、えっ、今言いますか」
「…？」
「あ、はい、いいです」

そういうとこですよ義勇さん。
慣れてないんです、その直球に来る好意に。わたし、あなたの好きに応えられる自信がまだないです。
あなたが私を想う気持ちと同じくらい想える自信がない。
少なくともこうされるのは嫌じゃないし、むしろ好きなんだとは思う。
いくらなんでも流石に好きでもない男とあっさり寝るような女じゃないはずだ。うん。私はそんな貞操観念の緩い女じゃない。

「義勇さん、寝ましょう。わたし眠くなってきました」
「…、そうだな」
「今日は一緒の日なんですね」
「俺としては毎晩でもいい」
「狭いから嫌です」

それは建前だけど心なしか義勇さんをしょんぼりさせてしまったらしい。
しかし、だ。毎晩のようにこうして背後から抱き締められるのは、些か困る。項に吹きかかる吐息が擽ったい。
うとうとと意識が微睡み始めた頃。首裏への痛みに思わず声を上げて起き上がった。

「いぃったあぁ！え、なに？！」
「悪い、加減が出来なかった」
「なんなんですか、義勇さん」

本当に痛かった、これは痕になっただろう。めちゃくちゃ痛い。
恐らく噛まれたんだと思うが一体何を思ってこんな事をされたんだ。

「……、…Aは、俺の嫁だろう」
「え？ああ、はい、そうですよ。義勇さんのお嫁さんです。それと今の何が関係あるんですか。めちゃくちゃ痛かったんですけど」
「A」
「なんですか」
「愛している」
「……、………寝ますよ義勇さん」

そのあまりにも直球過ぎる愛情を今簡単に受け止められるほど私は大人でも何でも無く。耳まで真っ赤になったのを隠す様に、とにかく顔を見られないようにするために義勇さんに背中を向ける。
それでも腹部に回った腕は私を逃がす気はないし、私も逃げる気はない。

「A」
「……はい」
「おやすみ」

そこで就寝前の挨拶ですか、義勇さん。私、貴方のことを理解したいですが到底難しい気がして心が折れそうです。