夜にサヨナラ【冨岡義勇】 (ページ19)

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白を赤に染めあげる① ページ19

不死川様は上背がある。普通の隊士よりもずっと背も高いのだろう。
思ってた以上に布を使ってしまったなあと反省した。羽織はすぐに縫い終えたが隊服は特殊な布を使っているせいで未だに裁断が上手くいかないことがある。
おかげで私は家に帰ってからも不死川様の隊服を縫っていた。

「珍しいな」
「はい。これ、不死川様のなんです。採寸して一から作ってるんですが中々どうして」
「……そうか」
「義勇さん、その微妙な顔なんですか。意図がさっぱり理解できませんよ」

元々表情が分かりにくいんだからもう少し言葉にして欲しい。
私も自分で自分の表情があまり動かないことを自覚しているので言葉にしている。ただ、無表情な分、棘があるように聞こえることも在るらしいが。
だとしても、義勇さんの場合は言葉がなさすぎる。一体何をどうしたらこんなに物を言わない人になるんだろう。おかげで義勇さんは誤解されがちだ。

「A、」
「はい」
「……なんでもない」
「言わないと分かりませんからね」
「分かってる」

分かってても言わないじゃないですか義勇さん！！！そんなんじゃいつか嫌われ…、……………嫌われて、ないよね？義勇さんって言葉足らずだから物凄い誤解を受けて嫌われていたり…いやいやそんなまさか。ねえ。うん。
私はそんな事無いって信じてますよ、義勇さん。

「ところで義勇さん、不死川様の御自宅知ってますか？」
「？…一応は」
「これ、出来上がったら直接届けに行くんです。一緒に行きませんか」
「……、…………分かった」
「ありがとうございます」

その間はなんですか。
そう言いたいけれど黙っておいた。私も大概である
隊服もひとまず形にはなった。残りは細かい部分をきれいに縫ってしまえば完成で徹夜でもすればあっという間に終わるだろう。
でも彼がそれを恐らく許さない。何せ布団は既に敷かれているし、私も私で手元をじっと見られていたら落ち着かない。
裁縫箱を片付けて、不死川様の隊服を籠の中に仕舞い込んでおく。

「A、」
「はい？」

ぽんぽん、と義勇さんが自身の膝を叩く。一体何かあっただろうか。
大人しく近付けば、ぐい、と手首を引かれてそのまま義勇さんの腕の中へと倒れ込む形で収まった。

「え、あ、あの、」
「ん」
「……、」