僕のお嬢様 -２-

16 ページ16

.




吉野くんちの食卓は騒がしかった。うちも中々騒がしいけど、吉野くんちは常に誰かしら喋ってて笑いが絶えない。松尾くんが不思議な事を言うとすかさず吉野くんが突っ込んで、そしたらみんな笑って。それにつられて私も笑って、とても心地良かった。




今は家が少しピリピリしてるし、久しぶりにあんなに笑ったかも。







「ありがとうございました」




家の前まで送ってもらい、車から降りると吉野くんも降りる。







「じゃあ、吉野くんありがと」

晃「どういたしまして」

「………あの話、考えておく」

晃「…あんまり期待はせんで待っとくわ」




そう言って笑った吉野くんはまた車に戻る。遠くなっていく車を見送って、私も家の門を潜った。







○○








太「晃一さん、お帰りなさい」




玄関を開けると笑顔の太陽が猫を抱えて俺を出迎えた。猫の喉元を撫でると嬉しそうに目を細める。




晃「……なあ太陽」

太「はい？」

晃「…俺ってやっぱりセコいんかな」






俺は余裕がないしズルい、そうしみじみ思った。




何も今じゃなくてもいい。ましてや、まだ高校生だ。何かと色んな理由をつけたけど、それはきっと正当化しているだけなんだ。弱っている所に付け込むような事して、それで結婚できて俺は喜ぶんだろうか。結婚しよう、と言った時のAの顔が頭から離れなかった。






太「…晃一さんはズルくないです」

晃「………」

太「男らしくて強くてカッコよくて、だから僕は晃一さんについて行くんです」

晃「…ふは、そっか……ありがとうな」





太陽の言葉に少し救われる。汚れのないきらきらとした瞳は、俺の心を洗ってくれる。





.

17→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す