32P Morimoto side ページ32
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コンペ参加者役の中谷さんは
ト書き通り、一緒に撮影を促す
感じ悪くなんてト書きはないのに
森「A、マイク」
「……ありがとう」
手を強く握って俯いたA見ると
俺の方が悔しくなる
俺は脚本とか全然書けないし知識もないけど
Aは才能があるから編集長から声がかけられたんだ
最後の5人まで残ったのだって
実力なのに、なんで……
「……」
森「…」
なんでって
中「ああ、失礼。森本さんの前でこんな話」
俺のせいか
まっすぐ俺を睨むような目を向けられるまで
想定してなかった悪意
巻き込むってこれぐらいじゃ済まないのかな
「あのっさっきから何が言いたいんですか」
中「いえ、ただ……」
森「……」
急にデビュー前のアイドルが
番組のメインみたいに扱われて
そりゃ気に食わないよな
中「Aさんは人望がお有りで羨ましいなと」
松「撮影、始めましょう」
種「…中谷さんマイクおつけします」
Aを見ると心配そうに俺の方を見てた
傷付けられたのは自分なのに
俺のせいなのに
優しいなぁ……
「…ええ、では先にインタビュー撮らせて頂き
そのあとお2人の会話シーンの撮影を」
種「Aさん、こちらで待って頂いていいですか?」
「あ、はい」
…ただ、仲良くなりたかっただけなのに
アイドルは人生全部、他人と
共有しなくちゃいけないのかな
小さい頃からこの世界にいて
ずっと考えてる疑問は未だに答えが出ない
田「北斗、シマウマの地肌って何色かな」
大人になった今は
俺自身だけじゃなく関わった人にも
それは当たり前に求められてしまう
松「今？え、クロでしょ」
田「ウソつくなよ！」
松「ウソじゃないわ知ってるだろ！」
田「…お前一生ウソつくなよ」
松「ついてねぇって」
それでも仕事を続けたいのは
俺には助けてくれる奴らがいるからで
カットされないように
自然に、君の記憶にも残るように
言葉を忍ばせる
種「撮影しますよ」
田「あ、はい」
森「……」
「…？」
Aに俺の行動はト書きだと台本でしかなかったと
それだけが伝わらないように
もう少し話したいと言ったのも
君の笑顔が可愛いと思ったのも
昨日した約束が楽しみなのも、
全然本当だから
それだけはちゃんと伝えたい
森「まず、参加したきっかけを…」
中「〜で、この話は〜〜」
君がもし優勝した時
ちゃんと自分の実力であることも
疑わないで欲しいから
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作者名：あり
| 作成日時：2019年9月14日 2時
