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数十分作業してやっと床が見えてくると
大「……普通」
松「はい」
大「脚本家は配役にさほど関わらないのよ
私みたいに無名な作家なんて特に。」
俯いたままの俺に大見謝さんは不意に話しかけた
大「なのにAさんに皆言い寄って変だと思った。
塩見さんほどの作家さんなら
端役くらい貰えるかもしれないけど」
顔をあげれば大見謝さんは
原稿に向かったままだった
大「同時オーディションってとこ?さすがテレビ
まるでセットを盛り上げる小道具扱い」
振り返らないのは大見謝さんの中で
この話は予測じゃないからだろう
俺の顔色も伺う必要もない
大「カメラなら切ってるわよ、隠しカメラ無ければ全部ね」
……監督の顔色も
番組側もバレることは予測のうちだ
役者の方にバラさないようにというルールだけが
言い渡されてるのだから
大「優勝者候補に言い寄るならAさんが正解ね」
松「……」
大見謝さんは制作会社に勤務する
脚本家、今回の参加は会社に言われて仕方なくだと
勝手に思っていた。
こうやってAさんを目の敵にしてるみたいだし
でも
大「カメラ気にしすぎよ、どうせ使われない
負ける私との会話なんてね」
松「…ならなんで、原稿に向かってるんですか」
こんなに資料に囲まれて
大「……20そこらが偉そうに」
こんなに資料を読みあさって
毎日部屋に籠もって
やり方は人それぞれだからそれを努力とは
他人が呼ぶことはないけれど
負ける気はないはずだ
この部屋入って机に向かう大見謝さんの背中を
俺は、かっこいいと思った
大「資料探して」
松「はい」
Aさんの脚本も楽しみだけど
小説しか読んだことないし
大見謝さんのリアリティある作品も
読みたい……いや、関わってみたい…
大「Aさんの脚本の映画一度だけ見たことあるけど」
映画かぁ……
大「小説とは全然違うわね、多分大分根暗よ」
松「根暗…」
大「彼は理解してるみたいだから
出遅れてるんじゃない?」
慎太郎?確か会ったことあるって…
松「…いやいやっ、俺はそんなつもりは」
大「カメラ切ってるって」
松「だから違いますって……あ、あ!」
大「何…それよそれ!」
たまたま崩してしまった山の中から
一冊のファイルが出てきて
そのタイトルが探してた資料名と一致した
大「助かった〜ありがとう」
松「見つかって良かったです、では仕事あるので」
大「はいはい、お疲れ様」
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作者名:あり | 作成日時:2019年9月14日 2時