青い夢を、いつかの君へ贈る

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　 フィールド内もベンチも熱狂に包まれていた。
　 廻が２点連続で点を入れているからだ。

　 チームメイトもこの熱い流れに乗っているせいかいつもより反応がいい。
　 かいぶつにぎりぎりついていけている。

　 今、廻はひとりじゃない。

　 これはきっと、一時的なもの。
　 今後もこんな展開があるとは限らない、けれど、今廻はフィールドにひとりぼっちじゃないと思えるだけで嬉しい。

　 チームメイトがシュート体勢に入る、と見せかけて逆サイドの廻にパス。
　 相手キーパーはフェイクにつられ前に出ている。
　 廻はボールを浮かせ、鋭いシュートをゴールに刺した。

　 ハットトリックが決まり、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

　 チームメイトが皆廻に飛びつく。
　 いつもは文句を言う監督もみんなよくやったと廻をもみくちゃにしていた。
　 皆が歓喜に震える中、ドキドキと心臓の音がよく聞こえた。

　『・・・ぁ・・・っ・・・。』

　 それが今この瞬間の、喜びの鼓動じゃないことを私は痛いほどよく知っていた。

　 もみくちゃにされた廻と目が合う。
　 最初は満面の笑みを向けていた廻も徐々に笑顔が消えていくのがわかる。

　 太陽の光が突き刺さるように熱いのに体が氷のように冷たく感じる。
　 心臓が口から吐き出してしまいそうなほど苦しくて痛い。
　 息、あれ・・・息、吸えて・・・あれ、吸えてない・・・？息、えと、呼吸。

　「蝶！！！！」

　 廻の叫びにようやく周りが私が倒れたことに気付く。
　 近くにいたマネージャーたちが何度も私を呼び、体を揺する。

　「蝶、蝶！！」

　 傍にいる廻の声が遠くに聞こえる。
　 ああ、ごめん、ごめんね廻。
　 さっきまであんなに楽しそうに笑っていたのに、泣かせちゃった・・・。
　 せっかく、みんなと一緒にサッカーできたのに。

　 私のせいで台無しにしちゃった。

　『ご・・・め・・・ゲホッゲホッ・・・ひゅっ・・・。』

　 ごめん。

　「やだ！！蝶！！」

　 ごめんね。



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