青い夢を、いつかの君へ贈る (ページ19)

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　今の、チームメイトがあと３歩早くついてればシュートを打てたのに。

　「おい蜂楽ちゃんとパス出せよ！！」
　「もっとまわりみろ！！」

　ちがう。おまえたちが遅いんだ。
　おまえらのレベルが低いんだ。
　廻のプレイに追いつくための「数値」が足りないんだ。
　廻を責めないで。お願い、廻と一緒にサッカーをして。ひとりぼっちにしないであげて。

　『っ・・・。』

　どうして皆廻についていこうとしないの。
　私なら廻の出したいパスの位置がわかる。廻のやりたいプレイがわかる。
　私なら・・・。

　『けほっ・・・。』

　私が、男の子で、普通の、元気な体なら・・・。

　『けほっけほっ・・・！』

　廻のかいぶつに、なれたのに。

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　試合は１－０で廻のチームの勝ち。
　この１点は廻が入れたゴールだ。

　『はぁ・・・っ・・・は・・・。』

　胸を強く抑える。
　苦しい・・・痛い・・・。

　『・・・っ・・・ゲホッゲホッ！！ひゅー、ひゅっ・・・ぅ！！』

　ポケットにしまっていた吸入器を取り出し、薬を吸い込む。
　自分の腕を爪が食い込むほど強く握り苦痛に耐えた。

　「蝶！！」
　『っ！！』

　視界が回る中、走ってくる廻が見えた。
　向こうでみんなが集まっているのに、私が発作を起こしているのがわかって来てくれたようだ。
　さっきはチームメイトの言葉にも監督の言葉にもぼーっとしていたのに、私のために必死な顔をして来てくれたことに、こんな状態でも嬉しく感じてしまった。

　「いま！発作起こしてたでしょ！！大丈夫！？」
　『んっ・・・、はっ・・・だ、いじょぶ。』
　「顔真っ青だよ・・・。救急車呼んでもらう？」
　『いい・・・。』
　「ほんと？嘘ついちゃダメだよ？俺の目見て言って？」
　『っ・・・ほんと、だよ・・・。落ち着いてきたから・・・、・・・本当に、大丈夫。』

　廻にまで、迷惑をかけたくない。

　「・・・もうちょっと待てる？絶対に監督にミーティング即行で終わらせてもらうから！」
　『うん。』
　「耐えられなくなったらなにか、合図送ってね。俺ずっと見てるから！」
　『あは、ちゃんと、おはなし聞いてないと。』

　手を振ってチームの元へ戻る廻を見送った。
　額に浮かんだ脂汗を袖で拭う。
　遠目からでもわかるくらい、私今ひっどい顔してるんだろうなぁ・・・。

　(・・・家、帰りたくない・・・。)

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