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暫く笑い合っていると本日最後のチャイムが鳴った。
毒島さんは目元に溜まっていた涙を拭うと机に広げていたノートや参考書をカバンの中にしまい、席を立ち上がる。
『帰ろっか。』
「・・・うん。」
玄関へ向かえば僕が脱ぎ散らかした靴があって、毒島さんはそれを見て小さく笑った。
向うから差していたグラウンドのライトはとっくに消えていて、野球部の声も聞こえない。
彼女と二人きりの帰り道はとても静かだった。
『私。』
先に口を開いたのは毒島さんだった。
『私、卒業したら薬師寺大学に行ってがん治療の研究する。あの子のために、苦しまない絶対に治る薬を創るの。
西園寺くんが言ってくれたように、悪あがきしてみようと思う。』
「うん。」
『・・・応援してくれる?』
「もちろんだよ!卒業してもずっと毒島さんのこと応援する、毒島さんが頑張ってるんだって思えたら僕も頑張れるからさ。」
『・・・。』
毒島さんは歩みを止めた。一、二歩進んで僕も止まり彼女の方を振り返る。
「毒島さん?」
『も、もっと・・・近くで・・・そばで、応援して、くれない、の?』
途切れ途切れで、いつも以上に小さな声だった。
だけど、優れ過ぎた僕の耳には聞こえてしまうもので・・・。
「え、っと、それは・・・その、そういうことです、かね?」
『・・・。』
毒島さんはこくこくと頷いた。
『・・・西園寺くんが好きだよ。西園寺くんの隣にいたい。』
耳まで赤くして、毒島さんは顔を俯かせた。
『・・・君のこと、一番には考えられないかもしれないけど、でも、でも・・・隣にいたいの・・・、ごめんなさい。』
「・・・それでもいいよ。」
僕は毒島さんの前に立ち、彼女の手を取った。
一番に考えられなくたっていい、優先されなくてもいい。
「これからもずっと君の隣にいられて、君の夢を応援できるんでしょ、最高じゃないか。」
『・・・西園寺くんは変わってるね。』
「えっ、そ、そう?」
『普通、優先されないならフると思うなぁ。』
「でもほら、僕はわかってて毒島さんに告白したんだし・・・弟くんのために悪あがきしろって言ったの僕だよ?断る理由がないじゃないか。」
『・・・西園寺くんは優し過ぎるよ。』
「そんな僕を好きになってくれたんでしょ?」
『・・・ふふ、うん、そうだね。』
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まっちゃ(プロフ) - コメント失礼します!ネタバレになってしまうので内容は書けませんが、番外編、とても面白いです!これからも弥さんの無理のならない範囲で、更新頑張ってください!影ながらも応援しています! (2021年4月18日 1時) (レス) id: 064c02c015 (このIDを非表示/違反報告)
弥(プロフ) - わわわわわさん» 申し訳ありません。番外編のリクエストは受けつけていないんです。また番外編を書く機会があればぜひ書かせていただきます。 (2021年4月17日 22時) (レス) id: 28d3fee7a9 (このIDを非表示/違反報告)
わわわわわ - 番外編のリクエストです。耳攻めされたと羽京がドS化したお願いします。 (2021年4月17日 22時) (レス) id: 9c9d4f1707 (このIDを非表示/違反報告)
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