毒にも薬にもなれない６

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　 スイカちゃんを手招きして隣に座らせた。

　「いまの歌すごくやさしい曲だったんだよ。」
　『・・・「翼をください」って曲、日本で結構知られている曲なの。』
　「つばさ？」
　『うん。・・・リリアンにもね、昔教えてあげたの・・・、この曲を・・・。あはは、一緒に歌った事もあったなぁ。』
　「天女の歌声の人と聖はお友達だったって聞いたんだよ！」
　『そう、お友達・・・大切な、大切な友達だった・・・。』

　 また浮かんできた涙を流れる前に拭った。

　「・・・、・・・スイカもういっかい今の曲聞きたいんだよ。」
　『え？』
　「聖と天女の歌声の人がいっしょに歌ったって曲、スイカも歌えるようになりたいんだよ！だからもういっかい、ちゃんと聞きたいんだよ！」
　『・・・うん、いいよ。』

　 スイカちゃんを膝の上に乗せて、少し長く息を吸い、歌った。

―――今 私の願いごとが かなうならば 翼がほしい

　 声に出してちゃんと歌い始めれば、さっきよりも一層、リリアンとの思い出が鮮明に思い出された。
　 あの日、短期留学でリリアンと出会ったあの頃・・・。
　 次の日には日本に帰ると伝えれば彼女は「聖の好きな日本の曲を教えて」と言ってきた。

　 日本語がわからない彼女に日本語の歌詞を覚えさせるのは大変だったけど、でも、とてつもなく楽しかった。
　 ふふ、あの歌姫リリアンと一緒に歌った、なんてファンに知られたら怒られちゃうなぁ。

―――子供の時 夢見たこと 今も同じ 夢に見ている

　 この曲が好きな理由は、よくわからない、なんとなく好きってだけ。
　 でも、昔天使になりたいという幼い夢とこの歌の歌詞が重なっていたんだと思う。

―――悲しみのない 自由な空へ 翼はためかせ 行きたい

　 歌い終えればスイカちゃんは小さな手で拍手をした。

　「聖の歌声すごくきれいだったんだよ！」
　『リリアンには負けるけどね・・・ありがとう。』
　「やっぱりどの時代の人も、みんな羽根がほしいって思うんだよ。スイカも自由に飛んでみたいんだよ。」
　『きっとすぐに飛べるよ・・・なんたって私達は地球のこの狭い空だけじゃなく、このさらに向こうの、宇宙へ飛ぼうとしているんだから・・・。』

　 気球で精一杯だった私達はとうとうロケットまで作ろうとしているのだから。
　 そう、私達はまた戻るのだこの空の彼方へ、リリアン達が繋いでくれた科学で。



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