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不安が募っていくうちに後宮の入り口に辿り着いた。
私が指さきで頭首の元までの近道をなぞるように説明する。
「・・・まだ中に何人か残っているね。」
羽京くんが耳で後宮内の人数を把握する。頭首までの道のりにも何人かいるようだ。
ここで邪魔が入るわけにはいかない・・・。
『杠ちゃん松明用意して・・・!』
「え!?は、はい!」
『羽京くん矢貸して!』
「え?」
羽京くんが持っていた矢筒を奪うように取り、ウエストポーチに入れていた包帯を取りだす。
矢の先端に包帯をぐるぐる巻きにし、その上に消毒液をたっぷりと染み込ませていく。
完成と同時に松明の準備もできたようだ。さすが超器用の杠ちゃん、秒で火を起こしてくれた。
矢筒を羽京くんに返せば、出来上がったものを見て彼は把握してくれた。
「なるほどね!」
羽京くんは矢の先端を杠ちゃんが持つ松明で火をつけ、素早く後宮の至る所に放っていく。
やがてあたりから煙が上がり始めた。
「うおボヤだ!!」
「あっちこっちで、なんでこんなほぼほぼ誰もいねえ時に・・・!」
残っていた人達が火を鎮めようと走り出す。頭首の元への道のりにはもう人はいない。
『こっち!』
人気が無くなったのを確認し走り出し皆を案内する。
「すごい、もう頭首のすぐそばに・・・後宮にいたあの短期間で道を?」
「よくマッピングできたね、高い所ニガテなのに。」
『それ今言わないで羽京くん!!必死に下見ないようにしてるから!!』
よし、この道を渡ればあとはまっすぐ頭首の元へ行ける。
頭首の屋城の手前でソユーズくんは一度足を止め、ぼーっとそこをみつめた。
「・・・?大丈夫ソユーズ?」
「あ、ああうん。な・・・なんでもないよ。」
「おおおしこの中に頭首の石像があるんだな!!任せろ俺が運ぶぞー!!」
大樹くんが屋城の暖簾を勢いよく開けた。
しかし、中には石像はない・・・あるのは石の破片の山。
破片の一つを見れば、ソユーズくんそっくりの目があった。
「せ、石像・・・壊されちゃってるんだよ!!」
『・・・っ!!イバラァ・・・ッ!!』
歯を食いしばる。
あの男・・・こんなところまで保険をかけていたのか・・・!!
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柊渚(プロフ) - めっちゃ面白いです!!更新頑張ってください!! (2021年4月5日 22時) (レス) id: ebf2823d1c (このIDを非表示/違反報告)
小豆 - この作品大好きです!応援しています! (2021年3月30日 17時) (レス) id: cf49d2eead (このIDを非表示/違反報告)
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