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ここで頭首が石像だとキリサメに教えてしまえば、私の命はない。
恐らく、キリサメも石化させられるだろう。
何も知らない人をそんな目に遭わせるわけにはいかない。
『・・・キリサメ。』
「!」
『あなたは、この卑怯者と頭首、どちらを信じるの。』
「?」
『自分を、自分が忠誠を誓った頭首を信じなさい。』
「何を言っ」
「キリサメちゃん。」
イバラがキリサメの言葉を自分の言葉で遮る。
「そろそろネ、もう一人の逃亡者探しに行った方がいいんじゃないかな。ここはおじちゃんに任せてさ。」
「・・・かしこまりました。」
キリサメはイバラに一度頭をさげ、私に一度目を向けた後牢から去る。
イバラはキリサメが立ち去ったことを確認すれば、私を睨んだ。
「どこまで知ってるのかな。」
『・・・さぁ。うっ!!』
鞭で顔を打たれ横に倒れる。イバラが持つ鞭からは私の血が滴り落ちた。
『っ・・・いつか、いつか報いが来る。
あなたが今まで、この島の人にやってきた罪は、全て自分に返ってくる。
果てしなく、死んだ方がマシだと思う絶望が、必ず、近い将来、あなたを襲う!』
「あ、そ。」
『っ・・・、・・・』
前髪を掴まれ顔を持ち上げられる。
「おじちゃんが聖ちゃんの仲間を見つけるのと、おじちゃんがやられるの、どちらが先だろうネ。」
『きゃっ!!』
顔を強く床に叩き付けられる。
イバラは怒りを抑えようとせず、大きな足音を立てて牢を出ていった。
すぐさま見張りが牢を閉める。
『・・・っ。』
溢れ出そうになる涙をぐっと堪える。
泣いてはいけない。泣けば負けだ。
(怖かった・・・殺されなかった、よかった・・・よかった・・・っ!)
痛みに耐え、体を起こす。
血のにおいと土のにおいに混ざり、ほんのりとキンモクセイの香りがする。
懐に隠していたお守りだ。
持っていたポーチ、といっても、もうマッチくらいしか入ってないけど、あれはとられちゃったけど・・・よかった、別の所に隠しておいて・・・これまで奪われていたらきっと絶望してた。
(・・・大丈夫、きっと・・・。)
きっと。
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柊渚(プロフ) - めっちゃ面白いです!!更新頑張ってください!! (2021年4月5日 22時) (レス) id: ebf2823d1c (このIDを非表示/違反報告)
小豆 - この作品大好きです!応援しています! (2021年3月30日 17時) (レス) id: cf49d2eead (このIDを非表示/違反報告)
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