月々の恋【ツキウタ。短編集】

【卯月】夢か現か（望月様リク） ページ29

貴女side


貴『眠・・・』



　 大学の人気の少ない敷地


　 いまは緑色に生い茂っている桜の木の下


　 日陰に入り休んでいる


新「先客か」

貴『・・・、新？』


　 眠たくて落ちかけた瞼を開く


　 そこにはいつものごとくイチゴ牛乳を飲む彼氏

　 卯月新


新「俺の席ー」

貴『取ったもん、勝ち・・・』

新「・・・今日は珍しくお眠だな」


　 私の隣に座った新

貴『昨日遅くまで今日のテスト勉強しててね

　 寝不足・・・』

新「寝不足はお肌に悪いぞー」

貴『ん・・・』



　 新と話している最中でも半分寝てしまう


新「・・・しかし、もう夏かー

　 早いな・・・もう２年だし

　 大学を卒業するのあっという間なのかもな〜」

貴『・・・』


　 隣で小さくプツッと言う音がした


　 おそらく新がそばに生えているシロツメクサを取ったのだろう


　 瞼が落ちきって、いまの私にはそれしか考えられない


新「・・・大学出たら暫く仕事で急がしくなんだろうな

　 寝る時間あるかな・・・」


　 返事をする力はもう無くなってしまった


新「Aは大学出たらどうするんだ？


　 って、もう寝かけてんな・・・」


　 新が私の左手を掴んだ


　 なにかが薬指にはまる



新「本物じゃねえし、まだまださきの話だけどさ」



　 もう失いかけている意識の中


　 妙にその言葉ははっきりと聞こえた


新「結婚しよっか」



　 あぁこれはきっと夢なんだ


　 だからこんなにもはっきりと聞こえる


　 夢でこんなにも嬉しい事があるなんて




貴『ぅん・・・』



　 それだけ言って




　 そこからの記憶はない


・

・

・



貴『んふあぁーっ・・・！』



　 気付くと夕方


　 隣に新はいない


　 彼が来たのも夢だったのかな


貴『ケータイ・・・』


　 ポケットからケータイを出す


　 そして気付く



貴『・・・』

　 左手の薬指に小さなシロツメクサの指輪


貴『・・・夢・・・？』



新「まだここにいたか寝坊助ー」

貴『新・・・』

新「いくぞ、帰りにアイス買おう」

貴『最近食べ過ぎじゃない？』


　 立ち上がろうとすると新が手を差し出す


　 その左手の薬指には私と同じもの




貴『・・・帰ろっか』





　 それを見て、私は小さく微笑んだ




・

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