ばれてはいけない。2 (ページ19)

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向井side

Aの家はもちろん

あの騒動があったので引っ越していて

俺はまだ新居に行ったことがない。

なんなら場所も詳しく知らない。

やけど。

行動を起こさないといけないと思った。

ふと

初めて会った日を思い出した。

暖かい木漏れ日に、

教会の空気がキラキラと輝いて

ファインダー越しに見たAは

まるで天使のようだった。

あの時から俺は

惹かれていた。

彼女には無垢な美しさと

溢れ出る清さがあった。

本当にこのまま

連絡せず、

終わりになんてなってしまったら…

「……絶対にあかんやん」

男として思った。

例え、Aが望んでなくとも

俺はAから離れたくない

俺が、俺だけがAを守ってあげたい。

他の誰にも渡したくない。

初めてこんなにも

人を愛し

守り抜きたいと

思えた。

全部Aのおかげなんや。

ただ

それだけの原動力で

俺は彼女の新居の最寄りまで行った

どこからか湧き出る自信があった。

理由もないのに、何故だか分かる気がした。

Aと会える気がした。

ﾌﾟｼｭｰ

「〇〇駅ー、〇〇駅に停まりましたら
次は××駅に停まります」

改札を出て19:00

ひたすら彼女を待ってみた

もう12月

厚めのダウンを着ていても

指の先から感覚が薄れていく

マスクから少し飛び出た鼻は

真っ赤でそこから漏れる息は白い。

やっぱり俺のことを素通りする人しかいなくて。

やっぱ会えへんのかな

自信無くなってきた

我慢強い方だと思ってるけど

状況が環境が俺を弱らせるようだった。

21:00は回っただろうか…

『…こ、康二くん…？』

向「えっ」

「もう…なんでっ…」

そういって目の前に突然現れた彼女の目は潤んでいた。

向「ずっとまっとったで。

我慢できずに、来ちゃったけど…

…許して…」

正直、反応が怖くて

声が震えた

でも精一杯の気持ちで

気持ちを伝えたかった。