中途半端 ページ32
Tsuji side
*****
あれから、今日で5日が経った。
あの後、警察はすぐに動いてくれた。
男の名前は分かっていたし、彼女が男に声を掛けられて無理矢理腕を引っ張られた映像がちょうど防犯カメラに映っていたこともあり、その翌々日には身柄が確保されたと連絡があった。
男は大学時代のことも含め、全てを認めているらしい。彼女を見つけたことはたまたまだと言い張っているらしいが、僕は信じない。信じないし、絶対に許さない。
ただとりあえず、一件落着、と言っていいだろうか。
彼女のトラウマはこれからも消えないだろうし、男も一生身柄を拘束されているわけではない。
これからは…もっとしっかり、僕が守らないといけない。
そう決意すると同時に思い出されるのは、あの日の夜のことだった。
彼女が、僕の家に泊まった夜。
僕の腕の中に抱きしめたまま、眠った夜。
劇場の楽屋で、少し離れたソファに座っている堂前さんに話しかけてみる。
『中途半端なのって1番あかんと思うんすけど』
堂前「え、なになに？俺に話しかけてる？」
『はい』
堂前「なんて？中途半端？」
堂前さんは、面倒そうな顔をしながらも僕のすぐ隣に移動してきてくれる。優しい人だ。
『この前…Aが、俺んち、泊まったんですけど』
堂前「え！？泊まった？もうそんなとこまで進んでんの？」
『いや全然…なんにも進んでないけど、泊まったんですよ、色々あって』
堂前「へぇ…それで？」
『抱いたまま、寝てもうて』
堂前「………なんて？」
『いやこう…抱きしめながら』
堂前「え、他は？なんかしたん？」
『いや、なんにも』
堂前「…よう我慢したな」
『いやほんまに。我ながら凄かったと思いますよ』
堂前「で？中途半端って？」
『目さめた時に、お互いなんも喋らんと見つめあう時間あって。なんか俺、そのままキスしそうなって』
堂前「うん」
『でも、いやいやあかんやろって思って。A、なんか言いかけてたんすけど、遮って起き上がってもうて』
堂前「ちょっとごめん…辻って童貞やったっけ？」
『んなわけないでしょ』
堂前「すごいな、本気で好きな人相手やとそんな奥手なんや」
『…まだ、好きってしっかり言えてへんし。付き合ってくれとも。だから…中途半端なこと、したなくて、でも一緒におったら触れたいとか好きって言いたいとか、そんなんばっかりやし』
堂前「……辻、後ろ」
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いと(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます！短編集のほうでもコメントくださった鈴さんですよね…？今回もとっっても嬉しいお言葉本当にありがとうございます(；；)何度も読み返して下さってるなんて嬉しすぎます。もちろんです、むしろこちらこそ引き続きよろしくお願いします！！ (6月8日 22時) (
レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - もしよければこれからもいとさんの作品とご一緒させてください！！！！！！！！！ (6月8日 22時) (レス) id: 2fbfb927f5 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 完結おめでとうございますそしてありがとうございます！本当に素敵でした。私はいとさんの作品が本当に大好きで、短編集の方も何度も何度も読み直して、読み直しては切なくなったりほっこりしたり、キュンキュンしたりしています。 (6月8日 22時) (レス) @page50 id: 2fbfb927f5 (このIDを非表示/違反報告)
いと(プロフ) - いちごさん» コメントありがとうございます！あぁ嬉しいです…(；；)そのお言葉のおかげで書き終えられて良かったなと改めて思えました！本当にありがとうございます。 (6月8日 21時) (レス) id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - しっかり長編を終わらせてくれてありがとうございます。毎回ドキドキしながら読ませていただいてました。長編ならではの焦ったい描写がとても良かったです！ (6月8日 21時) (レス) @page50 id: f5a6eed348 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いと | 作成日時：2023年5月17日 20時
