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弱くて情けない僕は、電話を掛けた。
泣きじゃくる彼女を見て、自分の気持ちを優先することなんて出来なかった。
本当は、1番呼びたくない人。
"その人"は、事情を話すと、すぐ行くからそれまで頼む、と言って電話を切った。
少し落ち着いたが、まだ微かに震えている彼女を近くの公園のベンチに座らせた。
まだ近くにあいつがいるかもしれない、と僕は周りをきょろきょろ見渡す。
もうこれ以上、彼女に何かあってはいけない。
すると遠くから、"その人"が走ってくるのが見えた。はぁはぁ、と息を切らしながら、ものすごいスピードで走ってくる。
『A！』
「…皓平くんっ」
"その人"…辻さんは、彼女のことを思いっきり抱きしめた。
『大丈夫、もう大丈夫やから』
全部、僕が出来なかったことだ。
抱きしめることも、もう大丈夫だと伝えることも。
分かっていたのに、出来なかったことだ。
「…あのっ、ほんま怖くて…でも…阪本さんが、助けてくれて」
『阪本、ありがとう』
辻さんは僕に深く頭を下げて言った。
当然だが、こんな経験は初めてだった。
阪本「いや、偶然見かけて…助けるのは、当たり前のことやし」
辻さんに背中をさすってもらって、頭をぽんぽんと撫でてもらった彼女は、やっと震えが止まったようだった。
阪本「あの、じゃあ俺、帰ります」
「そうですよね、お家帰るところだったんですよね？ほんまにすみません、ありがとうございました」
いえいえ、と会釈をして、2人に背を向けて歩き出す。
俺、ほんま、なにしてんねん、意味わからんやん、好きな人助けてライバル呼ぶって前代未聞やわ、いやライバルって位置にもおらんわ俺なんて、調子乗んなよ…と心の中で自分自身に当たり散らかす。
でもきっと、これで良かった。
僕の幸せなんて、彼女の笑顔の二の次でいい。
そう思える自分が、少しだけ誇らしくもあった。
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いと(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます！短編集のほうでもコメントくださった鈴さんですよね…？今回もとっっても嬉しいお言葉本当にありがとうございます(；；)何度も読み返して下さってるなんて嬉しすぎます。もちろんです、むしろこちらこそ引き続きよろしくお願いします！！ (6月8日 22時) (
レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - もしよければこれからもいとさんの作品とご一緒させてください！！！！！！！！！ (6月8日 22時) (レス) id: 2fbfb927f5 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 完結おめでとうございますそしてありがとうございます！本当に素敵でした。私はいとさんの作品が本当に大好きで、短編集の方も何度も何度も読み直して、読み直しては切なくなったりほっこりしたり、キュンキュンしたりしています。 (6月8日 22時) (レス) @page50 id: 2fbfb927f5 (このIDを非表示/違反報告)
いと(プロフ) - いちごさん» コメントありがとうございます！あぁ嬉しいです…(；；)そのお言葉のおかげで書き終えられて良かったなと改めて思えました！本当にありがとうございます。 (6月8日 21時) (レス) id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - しっかり長編を終わらせてくれてありがとうございます。毎回ドキドキしながら読ませていただいてました。長編ならではの焦ったい描写がとても良かったです！ (6月8日 21時) (レス) @page50 id: f5a6eed348 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いと | 作成日時：2023年5月17日 20時
