分かっているのに ページ27
Sakamoto side
*****
仕事が終わり、今日も家帰ったら酒呑も、と考えながら歩く。
あぁ、そういやお気に入りのつまみ切らしてたな。
あれは家の近くのコンビニには売ってないんよな。
しゃあない、ちょっとダルいけど買って帰るか、と少し遠回りすることにした。
だから…この場面に、遭遇することができた。
最初は、女性が男の人に絡まれているだけだと思った。いわゆるナンパ。
でも目をこらすと女性は見知った顔をしていて、そして男はナンパするような奴とはまた違う恐ろしい眼をしていた。
やばいやばい。どうする？
どうするって、助けるしかないやん。
彼女を救えるのは、俺しか、いない。
そこから先は正直あまり覚えていない。
彼女の腕を掴んでいた男の手を振りほどいて、なにかを言った。心臓がばくばくうるさくて、自分の声すらよく聞こえなかった。
なんとか男が走り去って、彼女のほうを振り返る。
彼女は目に涙をためて、肩を小さく震わせながら…ありがとうございました、と言った。
阪本「いえ、あの…大丈夫、ですか」
大丈夫なわけないやん。
かけるべき言葉は、こんなことではないことくらい、分かってる。
「すみません、はい…ちょっと、あの…昔、色々あったひとで」
ついに彼女は大粒の涙を零した。
僕は何も出来ない。ただ、泣いている彼女のそばにいることしか出来ない。
分かってる。こういう時、どうするべきなのかも。
分かってる。彼女が今そばにいてほしいのは、僕ではないことも。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いと(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます！短編集のほうでもコメントくださった鈴さんですよね…？今回もとっっても嬉しいお言葉本当にありがとうございます(；；)何度も読み返して下さってるなんて嬉しすぎます。もちろんです、むしろこちらこそ引き続きよろしくお願いします！！ (6月8日 22時) (
レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - もしよければこれからもいとさんの作品とご一緒させてください！！！！！！！！！ (6月8日 22時) (レス) id: 2fbfb927f5 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 完結おめでとうございますそしてありがとうございます！本当に素敵でした。私はいとさんの作品が本当に大好きで、短編集の方も何度も何度も読み直して、読み直しては切なくなったりほっこりしたり、キュンキュンしたりしています。 (6月8日 22時) (レス) @page50 id: 2fbfb927f5 (このIDを非表示/違反報告)
いと(プロフ) - いちごさん» コメントありがとうございます！あぁ嬉しいです…(；；)そのお言葉のおかげで書き終えられて良かったなと改めて思えました！本当にありがとうございます。 (6月8日 21時) (レス) id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - しっかり長編を終わらせてくれてありがとうございます。毎回ドキドキしながら読ませていただいてました。長編ならではの焦ったい描写がとても良かったです！ (6月8日 21時) (レス) @page50 id: f5a6eed348 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いと | 作成日時：2023年5月17日 20時
