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彼と出会ったのは、数年前の飲み会だった。いわゆる合コンみたいなもの。
出会いを求めて行ったことに間違いはないのだけど、結局私がゲットしたのは恋人ではなく男友達だった。それが彼。
そこから何年かの月日をかけて、どんどん仲良くなり、今の関係はいわば"友達以上恋人未満"だと思う。
食事に行く時は必ず2人きりだし、飲みすぎた日は手を繋いで帰ったこともある。
でも彼は毎回必ず終電に間に合うように私を駅まで送ってくれた。
好き、と言われたことはないし、付き合おう、と言われたこともない。
だけどなんとなく…あと一歩、ほんのちょっと一歩踏みだせば、この微妙な関係から抜け出せそうな気はしていた。
そんな矢先に、この展開。
初めて終電を逃して、しかも家に誘われた。
彼はいったい、何を考えているのだろう。
…何も考えてないかもしれないけど。
『コンビニ寄って酒買って、家でもうちょっと飲もうや』
「あぁ…うん、ええけど…」
なんとなく了承してしまった私。
すると彼は私の手を握って、じゃ行くで、と引っ張った。そこからはコンビニまでお互い無言で、手を繋いだまま歩いた。
今日、何か変わるのかもしれない。
少しだけ、覚悟と期待をした。
コンビニでお酒とおつまみを買い込んだ私たちは、彼の家へ向かった。
ここ、と言われ彼が部屋の鍵をあける。
「お邪魔します」
バタン、と玄関のドアが閉まった。
その瞬間、後ろから抱きしめられた。
「えっ、いや、皓平、待って」
『待たれへん』
「なに、急に」
『急やないやろ、家誘った時点でそういうことやって思わんかった?』
「…ちょっと思った」
『思ってるやん』
「思ったけど、1回待って、一旦座ろ」
彼は、しょうがないな、と言いたそうにしながら私を解放した。
部屋に入り、リビングで向かい合って座った。
彼が正座をしていたので、私も真似をした。
まっすぐ見つめてくる彼から目を逸らしたいのに、逸らせない。胸のドキドキを見透かされそうで恥ずかしかった。
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いと(プロフ) - オズワルダー・カイさん» コメントありがとうございます!すごく嬉しいです( ; ; )私も想像できすぎてニヤニヤしながら書きました!笑 (2023年4月15日 12時) (レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
オズワルダー・カイ(プロフ) - とても面白かったです!nktnさんが口を滑らすのが想像できて笑 何度でも読み返します! (2023年4月15日 8時) (レス) @page50 id: 6b28a2102b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いと | 作成日時:2023年3月25日 23時