終電と彼＿Kohei_T ページ41
※ちょーっとだけ、大人の表現があります。
*****
ふと腕時計に目をやると、時刻は23時半をまわっていた。
「え、もうこんな時間やん」
『何時？』
「もう23時半過ぎてんで、終電行ってまうわ」
お会計せな、と立ち上がろうとすると、右腕を掴まれた。
「…なに？」
『可愛いな』
「は？」
『A可愛いから、今日は奢るわ』
「なんなん？口説いてるん？」
『事実を言うてるだけ』
「奢ってくれるんやったら、刺身4点盛りやなくて8点盛りにしておくべきやったなぁ」
『…やっぱり全然可愛いないわ』
「なんやねん、ほんま」
彼は、あはは、と楽しそうに笑うと、すみませんお会計、と店員さんにカードを渡した。本当に奢ってくれるらしい。
「ごちです」
『はいよ』
外に出て、並んで歩く。
終電まではあと数分しかない。自然と早歩きになる私と、全然焦ってる気配のない彼。
「なぁ、置いて行くで」
『別にええよ、俺んちは歩いて帰れる距離やし』
「ほんまに置いて行くから」
そう言ってスタスタと歩き始めたはいいものの、やっぱり彼が気になって、何度か立ち止まって後ろを振り返る。
そんな私が面白くて仕方ないのか、彼はその度に笑いながらこちらに手を振ってくる。
『…あっ！』
「なに！？」
後ろで大声がしたので振り返ると、彼が頭を抱えていた。
「どうしたん」
『さっきの店に、上着忘れてきた』
「はぁ〜！？」
『取りに行こう』
「うん…って、えぇ？取りに"行こう"？」
『嫌や、1人で戻りたないって、だるいやん』
「だるいって皓平が忘れたのがあかんのやろぉ？」
『今日のお会計、だいぶいってたな〜A、結構飲んでたもんなぁ』
「…わかったて、一緒に行ったらええんやろ」
お店に戻って彼の上着を受け取った頃には、当然のように終電の時間は過ぎていた。
さぁ、どうしようか。
『終電、行ってもうたな、ごめん』
「適当にタクシー拾うわ」
『…徒歩で行けるて』
「いや、さすがに歩いて帰れる距離ちゃうよ」
『そうやなくてさ。俺んちなら、歩いて帰れるって』
「…え？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いと(プロフ) - オズワルダー・カイさん» コメントありがとうございます！すごく嬉しいです( ; ; )私も想像できすぎてニヤニヤしながら書きました！笑 (2023年4月15日 12時) (
レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
オズワルダー・カイ(プロフ) - とても面白かったです！nktnさんが口を滑らすのが想像できて笑 何度でも読み返します！ (2023年4月15日 8時) (レス) @page50 id: 6b28a2102b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いと | 作成日時：2023年3月25日 23時
