理由と彼＿Ryotaro_A ページ32
夕日が沈んで、辺りは段々と暗くなってきた。
近隣の飲食店のあかりが、ちらほらと灯っていく。
彼を待っている。私はこの時間が大好きだ。
『お疲れ』
彼の声がして振り返る。
「お疲れ、あっきー」
『今日もこんな時間まで仕事やったんや』
「うん、まぁね」
彼とは高校時代の同級生で、クラスもずっと同じだった。それだけではなく席替えをする度に隣や前後の席になって、仲良くならざるを得ない、という感じだった。
家が近かったこともあり、自然と毎日一緒に帰るようになった。彼はいつでもマイペースで、私はそんな彼のペースに流されることが心地よかった。
好き、だったんだと思う。この頃から。
でもその気持ちに気がつくには、私たちの距離は近すぎたのかもしれない。
結局私たちはそのまま卒業して、別々の大学に進学した。連絡先は知っていたけど、連絡をとることもなかった。
"席が近いから"、"家が近いから"。
理由を無くしてしまった私たちは、会う術も無くしてしまったのだ。
それから何年もの月日が経って、たまたま仕事が早く終わった日のこと。まっすぐ帰ることもなんだか勿体なく感じた私は、少しだけ遠回りをして、散歩をしてから帰ることにした。
繁華街を歩いていた時、正面から歩いてきたのが、彼だった。
最初は見間違いだと思った。
でもすれ違った瞬間、ふわっと風が吹いて…背の高さも、優しい目元も、あの頃のままだった。
立ち止まって振り返ると、少し進んだところで彼もこちらを振り返っていた。
「…あっきー」
『A』
あの頃と、同じ呼び方。
あぁやっぱりそうやぁ、と笑った顔も、全く変わっていなかった。
近くの公園のベンチで、しばらく話をした。
お互いのこれまでのことや、今の仕事の話。
彼と過ごす時間は、なんだかゆっくり流れているように感じる。
そして私は小さな嘘をついた。
「私も職場、この辺なんよ」
『え〜っ、そうなんやぁ。実家も席も、働いてる場所も近いってほんま凄いなぁ』
遠回りをしないと通らない場所だったけれど。
でも、徒歩圏内やし。この辺、みたいなものやろ。
「あっきーがもし良かったら、なんやけど。仕事、同じくらいの時間に終わる日、一緒に帰ったりとか、」
『ええなぁそれ！そうしよう！』
その反応が嬉しくて嬉しくて、こんなに嬉しいと思う自分に驚いた。
あの頃気がつくことが出来なかった恋愛感情は、この日、明確になった。
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いと(プロフ) - オズワルダー・カイさん» コメントありがとうございます！すごく嬉しいです( ; ; )私も想像できすぎてニヤニヤしながら書きました！笑 (2023年4月15日 12時) (
レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
オズワルダー・カイ(プロフ) - とても面白かったです！nktnさんが口を滑らすのが想像できて笑 何度でも読み返します！ (2023年4月15日 8時) (レス) @page50 id: 6b28a2102b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いと | 作成日時：2023年3月25日 23時
