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仕事が終わり、待ち合わせ場所に向かう。
私より早く着いていた彼は、おぅ、と手をあげた。
「お疲れさま」
『お疲れ、行こか。なぁ聞いてよ、昨日さぁ』
お店まで歩きながら彼はいつも通り、けらけら笑いながら近況を話し始めた。本当にいつも通りで、私には何も訊いてこなかった。
彼が予約してくれていたのは、個室の焼肉店だった。飲み物を注文して、乾杯して、お肉を注文して、お肉を焼いて…。
それでも彼の口から出るのは仕事や飼い猫の話ばかりだった。まさか知らんのかな、とこっちが気になってくる。いやでも知らんかったら2人だけでご飯なんか誘わないやろ。
「透くん、あのさ…知ってる、やろ？」
この空気に耐えかねた私は自分から尋ねた。
『うん、知ってる〜』
彼は微笑みながら、まるで歌うように軽く答えた。
「もうさ…ほんま勘弁してほしいわ。透くんからも言ったってよ、私の5年間返せやー！って」
思いっきり笑顔で、大声で、おどけながら。彼にも、心配はかけたくない。
すると彼は、ふふ、と笑ってからひと呼吸おいて…私を見つめて言った。
『頑張らんでええよ、Aちゃん』
「……えっ？」
『ずーっと頑張ってきたんやろ。誰にも心配かけたくなくて。俺の前では、頑張らんでええよ』
一気に込み上げてきたものを、抑えることはもう出来なかった。今日まで我慢してきた…いや我慢してきたつもりもなかった涙はどんどんこぼれ落ちて、最後には声を上げて泣いた。
彼はただ、うんうんと頷いたり、ティッシュを渡してくれたり、頬杖をついて優しく笑っている。
『いい泣きっぷりやね、大丈夫誰も見てないから』
その言葉で個室のお店にしてくれた理由がやっと分かって、まだ止まってくれない涙を拭いながらありがとう、と伝えた。
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いと(プロフ) - オズワルダー・カイさん» コメントありがとうございます！すごく嬉しいです( ; ; )私も想像できすぎてニヤニヤしながら書きました！笑 (2023年4月15日 12時) (
レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
オズワルダー・カイ(プロフ) - とても面白かったです！nktnさんが口を滑らすのが想像できて笑 何度でも読み返します！ (2023年4月15日 8時) (レス) @page50 id: 6b28a2102b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いと | 作成日時：2023年3月25日 23時
