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気がついた時にはもう私の右腕は解放されていて、代わりに右手は彼の左手に優しく繋がれていた。
「…辻さん」
元カレが、誰やねん、と呟いた。
『Aの彼氏』
彼がそう言い放つと元カレは、なんやねんと吐き捨てて去っていった。
私はまだ、呆気にとられている。
手と手は、繋がれたままだ。
「辻さん、どうして、」
『仕事行く途中、たまたま歩いとったら見つけた』
「…ありがとうございます」
『あれやな、好きすぎてレーダーみたいなん付いたんかも。Aが困ってんで〜って』
彼はふざけながら言った。
笑わせようとしてくれるのは分かるのに、私の目頭は熱くなって、涙がぽろぽろとこぼれた。
『えっ、めっちゃ泣いてるやん、怖かったな、もう大丈夫やから』
私はぶんぶんと大きく首を横に振った。
「なんか…なんか私…全然好きやない人に触れられるのも、好きって言われるのも、こんなに不快やなんて…知らなかった」
そう、知らなかった。
だって彼に頭を撫でられることも、好きと言われることも、嫌じゃなかったから。
好きじゃない人にされて、初めてその不快さを知った。
……あれ？
『…それってさぁ。A』
彼が悪戯っぽく笑う。俯いている私の顔を覗き込んで、目を合わせてくる。
『なぁ、俺に好きって言われるん嫌？』
ううん。
『俺に触られるん嫌？』
ううん。
『俺のこと、好き？』
…うん。
私は小さく、首を縦に振った。本当に、小さく。
それを見逃さなかった彼が大きく広げた腕に、包まれた。
「ちょっとあの…商店街のド真ん中で…恥ずかしいです」
『じゃあ離そか』
「いや、もうちょっとだけ」
『ははは、素直やん』
「なんかごめんなさい…自分の気持ちに気がつくん、遅くって」
1番初めは本当に恋愛感情はなかった。いつからだろう、その線を超えたのは。最近のような気もするし、だいぶ前からだったような気もする。
『ええよ』
彼がそう言ってくれたので、もうええか、と思った。とりあえず今はこの暖かい腕の中に身を任せよう。
「さっき、俺彼氏って嘘ついてましたよね」
『あの時はな。でももう、嘘やなくなったやろ』
そうですね、と返すとまた強く抱きしめられた。
『言うたやろ？絶対好きにさせるって』
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いと(プロフ) - オズワルダー・カイさん» コメントありがとうございます！すごく嬉しいです( ; ; )私も想像できすぎてニヤニヤしながら書きました！笑 (2023年4月15日 12時) (
レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
オズワルダー・カイ(プロフ) - とても面白かったです！nktnさんが口を滑らすのが想像できて笑 何度でも読み返します！ (2023年4月15日 8時) (レス) @page50 id: 6b28a2102b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いと | 作成日時：2023年3月25日 23時
