届かない彼＿Kohei_T ページ1
彼は私の手の届くような人ではない。
そんなこと初めから分かっていて、分かっていたのに、好きになってしまった。
そのふわふわした髪の毛も、一見怖そうに見えるのに誰よりもよく笑うところも、ふとした時にぐしゃっと私の頭を撫でてくれる大きな手も、さりげなくそっとくれる優しさも。全部が好きで、気がついたころにはもう戻れなかった。
私はこの恋を随分拗らせている。
彼を好きになる人は私以外にもたくさんいるだろう。そして、私よりも彼に似合う人もたくさんいる。
諦めなくちゃいけない。
でもどうしても、彼が私に笑いかけてくれる度あふれてくる想いを断ち切れなくなる。
諦めよう、やっぱ無理、諦めよう、どうしても無理…これを繰り返して2年も経ってしまった。
今日も私は、彼を含む数人とお酒の席を囲んでいる。憎いことに、彼は私の真正面の席に座っている。
『A。酔うた？』
「え？」
『なんか顔、赤ない？』
確かに今日はいつもより飲むペースが早かったかもしれない。でも、正直全く酔ってはいない。お酒は強いほうだ。顔が赤いのはたぶん…彼が目の前に、座っているから。
でも、彼にこんなことを言われるのは初めてで私はなんとなく、本当になんとなく…小さな嘘をついた。
「ちょっと、酔うたかも、しれません」
すると彼はガハハと笑って、珍しいやん、と少し嬉しそうに言った。そして店員さんを呼んだ。
『すみません、お冷ひとつ』
「…ありがとうございます」
『あかんで、飲みすぎは』
「はい」
そのあと私は彼が注文してくれたお水を少しずつ飲みながら、彼を中心に盛り上がっているみんなの話をぼんやり聞いていた。
あぁ、今日もあんまり話せなかったな。
でも、やっぱり優しい人だな。
会はお開きとなり、全員で店の外に出た。
ごちそうさまでした、ありがとうございました、と一番先輩の彼に次々に挨拶をしてみんなが帰ってゆく。
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いと(プロフ) - オズワルダー・カイさん» コメントありがとうございます！すごく嬉しいです( ; ; )私も想像できすぎてニヤニヤしながら書きました！笑 (2023年4月15日 12時) (
レス) @page50 id: 5013af6899 (このIDを非表示/違反報告)
オズワルダー・カイ(プロフ) - とても面白かったです！nktnさんが口を滑らすのが想像できて笑 何度でも読み返します！ (2023年4月15日 8時) (レス) @page50 id: 6b28a2102b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いと | 作成日時：2023年3月25日 23時
