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病院に行けと女は言ったものの、病院に行くより蝶屋敷に向かった。応急処置に過ぎない包帯も、直して欲しかったんだと思う。


「うわぁ、どうして傷口に直接包帯を巻いたんですか?」
「…別にいいだろォ」
「そんなだから傷が残って、人々から怖がられるんですよ」


笑顔で毒を吐いてくる胡蝶。元々、巻いたのは自分ではなく、知らない女。不死川は悪くないのだ。だが、それを胡蝶に話せる訳がなく、不死川は言い返す事も出来ないのを、誤魔化すように生返事をした。


「本当にどいつもこいつもですよ。次、こんな大怪我したら毒で殺しちゃいますよ?勿論、人間用の毒で」


笑みを絶やさず、拳をぶんぶんと振り回す胡蝶に、本当に出来るのか、と冷めた目で見つめていたら、それを汲み取ったらしい胡蝶は、冗談です、と如何にも明るい声で言った。しかし、声じたいは明るいが目が、笑っていないのだ。あまり信用ならない。案外、本気で毒を使って襲ってきそうなものだ。それを想像すると背中がぶるりと震える。早く帰りたくなった。


「不死川さん」
「何だァ」
「遊女は、やめておいた方が」


なぜ分かったのか。女と言うものの理解のし難さが、不死川はより一層深まった。

帰って早々と、風呂敷を開けて見ると、菓子と笄が入っていた。遠慮する義理もないので菓子は頂くとして、笄はどうしたものか。捨てても良いのだが大層な柄だったり、石などが埋め込まれていて、如何にも高価ですと言い張っているような物だった。如何せん、捨て難い。


「カステラですか?不死川様。そんな高価なもの…、誰かに差し上げるのですか?」


隠は子供のような眼差しで菓子を見つめる。暗闇の中、偶然にも鬼に飛ばされた場所なだけあって詳しい場所も、はっきりとは覚えていない。溜息を吐いた。

カステラとやらを口に放りこむ。開けた瞬間に漂った甘い香りや、柔らかい食感に、またざらめの甘さが加わって口一杯に広がる。むしゃむしゃ、と頬を膨らましながら咀嚼する。不死川の視線は、明後日の方を向いていた。

墨を溢したように広がる暗闇に、無数の輝きが散らばらされた、ベールのような空だった。月は残念ながら雲で隠れてしまっている。空をぼんやり眺めて、二つ目のカステラに手をつけた。この笄を返して、あの女とも無縁。不死川はそう思っていた。難なく三つ目の、カステラも完食してしまった。

参→←壱



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作者名:鮭餅 | 作成日時:2019年10月20日 12時

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