episode４４ ページ46
「──なにしてんですか」
今日の仕事を終え、店から出た私は、例の迷惑客──「さくら」を見かけた。
ただ見かけただけなら特に気に留めないが、同僚であるAのあとをつけているようだったので声をかける。
一度店でAに突っかかっていた過去がある彼女には、警戒していた。
「え……っと、誰？」
「そこのカフェのだけど。あなたうちのスタッフに執拗なクレームしてた人ですよね、まだ彼女に用があるんですか？」
少しきつい言い方になってしまったけれど、私、りんにとっては、Aは大事な大事な友達だった。
彼女を傷つける人は許せなかった。
「……確かに前に文句言ってたのはそうだけど、今日はそんなんじゃないってば！！」
少し離れた先に本人がいるからだろう、声のボリュームはしっかり絞り、その上で反論してくるさくら。
その表情からするに、嘘はついていなさそうだ。
「じゃあこそこそつけてるのはどうして？」
「無意識にふらって店寄ったらなんか泉とAが二人きりで話してるから聞き耳立てちゃってるだけていうか……」
これも迷惑行為なのか、とうつむくさくら。
こう静かにしてればかわいらしいのに、害悪行動が多すぎてある意味かわいそうという感じだ。
「……一回でも傷つけたら、なかったことにはならないの」
私はボソッとつぶやいた。
何て？ とさくらが聞いてきたが、なんでもない、と首を振った。
──私の父親は、取るに足らない小さな小さな会社を経営している。
その会社は２年前、日本を代表する財閥のひとつである「天祥院財閥」に買収された。
もちろん父も望んだことではあったから何ら問題はないこと。
むしろ安定した収益は得られるようになり、不安定だった経営面では多大なメリットとなった。
工事の現場監督から実際に作業をするところまで、父の会社は天祥院財閥の発注通りに動くようになった。
ESという大きなビルを作ったのは、私の父の会社。
それだけ聞けば、アイドルの理想郷を物理的に作り上げた素敵な会社、と思われるだろう。
ただ、現実はそうはいかない。
ESの建設にあたって、公園や花屋など、以前まで地域の住民に親しまれていたものを取り壊さなくてはいけなくなった。
その住民にとって、父の会社は目の敵となった。
私の姉は、取り壊しの工事が始まるその日まで、毎日のように公園や花屋に足を運んでいた。
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咲愛(プロフ) - ﾂｷさん» コメントありがとうございます！始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです！続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします！ (2023年2月22日 16時) (
レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ﾂｷ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます！毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました！続き楽しみに待ってます！ (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲愛 | 作成日時：2023年1月27日 12時
