××エンド、××ルート (ページ7)

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何千回も通った事務所の廊下。

見知った部屋の数々だけど、どの扉にも入る気にならない。
なんとなく、入るべきじゃない気がする。

事務所の大人の姿も見かけるけど、どの人も覚えのない人ばかりだ。
知っている顔がひとつもないなんて。

そんな大人にも見つかってはいけない気がして人気のない廊下を歩き続ける。

夢の出口。向かわなければならない場所。

⋯⋯夢にしては全てがリアルだ。

あの翔太も、知り尽くした事務所も、見知らぬ大人も、圏外のスマホも。

頬を抓った痛みだってある。

階段の踊り場でズルズルとしゃがみこむ。

冷たい壁の温度と無機質な照明。

もう何年も使っているシューズの紐が解けかけていたから結び直した。

いつだって私は俯いてしまう。

気づいた時には下を向いていて、それを前へと向かせてくれるのがメンバーだ。

でもマリアはいつだって前だけを向いていて、その視線が靴に向くことなんてない。

私はそんなマリアが羨ましい。

⋯⋯ずっとずっと、子供の頃から、
替えのきかない存在に憧れていた。

女の子なら誰もが夢見るプリンセス。

ガラスの靴を落とすお姫様でも、

眠りながら王子様を待ち続けるお姫様でもない。

ただの女の子に、

誰かの唯一になりたかった。