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香ったバニラは懐かしくて心地良かった。
けれど如何せん状況的にあまりよろしくない。
たくさんのジュニアが練習しているレッスン場で
結構な注目の的になっている。
そのジュニアの中には件の先輩グループもいるものだから
冷や汗が出そうだ。
公私混同だって怒られそうでもあるし。
「⋯⋯アイツらぶっ殺す」
耳元でそんな言葉を呟いた樹くんの顔は見えない。
けれど物騒すぎるその言葉に秘められた怒気は感じ取れた。
『樹、』
樹「今どこいんの?一発ずつ入れっから連れてこいよ」
『暴力じゃん、やめて』
樹「先にやったのは向こうじゃん。お前、こんなやられてもまだアイツらを庇うの?まだアイツらを信じんの?」
肩に手を置かれて真っ直ぐと視線が交わる。
レッスン場は曲が絶えず流れているのに、不思議と樹くんの言葉だけ鮮明に突き刺さった。
⋯⋯もうずっと気づいてるよ。
それでもどうして私があのグループを見捨てないのかなんて自分でも分からない。
でもきっと、大切だからとかそんな陳腐な理由だ。
"これ以上"を知らないからだ。
北斗「⋯⋯もう諦めてあげてもいいんじゃないの。
Aが人生を捧げるにはもったいない相手だったって」
でもそれもおしまい。
ゆっくりと頷くと、
ふっと全てが軽くなった気がした。
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小袖(プロフ) - 紅二点、二人とも幸せな形で落ち着いてくれれば良いなと親目線で見ています。お話の続き楽しみにしてます! (3月17日 20時) (レス) @page2 id: 85c8a13628 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シナモ | 作成日時:2024年3月14日 18時