検索窓
今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:58,689 hit

33 ページ34

33



ベッドサイドの椅子に腰掛け、


「ねえ、まっすー。」


と呼びかける。


するとまっすーは、なに?とこっちを見てくる。





「ありがとうね。」


なにが?と首を傾げる。






「命を、選んでくれて。」





ひゅっ、っとまっすーが息を飲んだのが分かった。





ずっと、ずっと、伝えないといけないと思ってた。




まっすーが自分自身にハサミを突き刺そうとした時、



俺は怖くて怖くて仕方なかった。



そしてそれと同時に、



まっすーが自分の命を選んだことを後悔しないように、


まずは「ありがとう」って、そう言わないといけない気がして。






俺がもし、同じ立場だったら、同じく命を選択していたかは分からない。



声を失うくらいなら、と命を捨てるほうを選んでいたかもしれない。



それくらい俺たちにとって声とは、かけがえのないものなんだ。





それでもまっすーは命をとってくれた。




たとえもう二度と、歌えなかったとしても。




その代償の大きさが分からないほど、俺らは浅い付き合いじゃない。



まっすーが歌にかけてきた情熱も、時間も、努力も、全て知っているから。



だからこそ伝える「ありがとう。」



声を捨てて、それでも生きることを決意してくれて、




ありがとう。



俺は、それが言いたいんだ。







『驚いた。手越なら、声を優先させるかと思った。』



「まさか!」


メモを差し出したまっすーの言葉を否定する。





「自分ならそうしたかもしれないけど、相手だったら、生きてくれていたほうが何倍もいいに決まっている!……これもエゴだけど…。」



まっすーは、ふふ、と笑うと、またペンを走らせる。






『お前も何かあったら命を優先させろよ?』









『俺も、手越が生きてくれていたほうが何倍もいい。』









その文字を凝視していると、まっすーは照れたように笑った。



文字を書くと、無駄な文字数を省くためか、まっすーは真っ直ぐな想いを紡ぐようになった。






「…もう…。」


元来、俺も素直な言葉に弱いため、気恥ずかしくて仕方ない。






ふふふ、と2人で向かい合いながら笑う。






ああ、困った。



俺の中での優先順位が決まってしまったではないか。



34→←32



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (106 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
174人がお気に入り
設定タグ:NEWS , メン愛 , 病系
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さく(プロフ) - はさみのりさん» これからも応援してます!素敵なお話ありがとうございました。 (2018年8月1日 1時) (レス) id: f81c7981b1 (このIDを非表示/違反報告)
きみえ(プロフ) - はさみのりさん» これからも素晴らしいお話待ってます! (2018年7月29日 17時) (レス) id: 07ca606d01 (このIDを非表示/違反報告)
はさみのり(プロフ) - さくさん» 返信がおそくなってしまい、すみません(><) とても嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもどうぞよろしくお願い致します。 (2018年7月29日 6時) (レス) id: 7684741bb3 (このIDを非表示/違反報告)
はさみのり(プロフ) - きみえさん» 返信が遅くなってしまい、すみません(><) はじめてだなんて光栄です…!こちらこそご覧いただきありがとうございました! (2018年7月29日 6時) (レス) id: 7684741bb3 (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - こんなに泣いたのは数年ぶりくらいというくらい、とにかく涙が溢れました。本当に感動しました!大好きなテゴマスの歌、声についてという重めな話題なのに、最後は幸せな気分になれました。素敵なお話をありがとうございました。 (2018年7月21日 9時) (レス) id: b4952ba7f1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:はさみのり | 作成日時:2018年6月5日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。