今、君が隣にいるということ

12 ページ13

12



正直、かなり悩んだ。



どうすればいいのか。




声を失ってまで、生きていくことになんの意味があるのか…、



正直悩んだ。








そして、


選択を決めたのは、家族からの一言だった。








一応、母さんには自分が病気だっていうことを伝えようと思い、電話をした。



「…俺、癌だって…。」

『…ぇ…？』

「母さん…、どうしょ…、」



久しぶりに聞いた母親の声に縋りたくなって、



「俺…、」



もう泣かないって決めたはずの涙が止まらなくなる。




「…っ、もう、声…っ、なくなるかもって…、」




支離滅裂な俺の言葉を最後まで聞いた母さんは、こう言った。





『最終的に決めるのはあなたよ。

でもね、母親として言うなら、生きていてほしいのが本音。

声なんか無くったっていい。

それ以上なんて望まないから、ただただ、生きていてほしい…。

それで誰かに文句を言われたら、実家に帰って来なさい。いつでも美味しいご飯を作って待っているから。』





茶化しながら明るく言うそんな母さんだけど、


電話越しでも泣いているってことくらい分かったよ？








でも、








でもね。







いつ、どんな時だって味方でいてくれるそんな存在に、







1番大切で、






1番最初のファンである、






そんな家族の期待に、






願いに、






応えてみようと、






そう、思ったんだ。




…

13→←11

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す