教育実習生と生徒 (ページ6)

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『じゃあ、みんなも好きな和歌を調べてみて～』

ゆるいけど、はじめの授業だし古典に少しでも親近感がわいてくれたらいいなと思って考えた授業だったから、なんとか思い通りになってくれた。

そうして、あっという間に50分の授業が終わってしまった。

『全員の発表聞けなかったので、ノート提出してください。明日また返すね』

そう言ってみんなにノートを集めてもらう。みんながどんな和歌を選んでいるのかとっても楽しみだ。

『あ、永瀬くん。ノート職員室まで運ぶの手伝ってくれない？』

「まあええよ。」

なんとなく、永瀬くんに頼んでしまった。快くとまでは言わないけどしっかりと仕事はこなしてくれるみたいだ。頼んでみるもんだなあ。

「Aちゃんってさあ、告白できないタイプなんやろ。だから、あの和歌が好きってことなんちゃうん？」

職員室に向かう途中に思いもよらない言葉をかけられた。

『んー、まあそうだね。』

「それか好きになったらあかん人好きになって言えんかったかやな」

『いや、えーっとそんなことはない』

「その言い方は図星やん。」

しまったと思った。

思いもよらないこと言われたから。確かに私が好きだった人には想いを伝えられなかった。

いや、伝えてはいけない人だった、が正解だ。

『はい、もうこの話終わりね。ここまで運んでくれてありがとう。5限もしっかり出るんだよ』

焦って思わず話を終わらせてしまった。だって、永瀬くんに見透かされてしまうような、吸い込まれてしまいそうなそんな瞳を向けられたから。

「はあ…まあええわ。」

そう言って今来た道を歩いていく永瀬くん。と思いきや、くるっと振り返って私の元に戻って来た。

「俺さあ、Aちゃんに興味持ったわ。覚悟しときや。」

『興味持ったって…どういう事、』

「まあ時期にわかるやろ～んじゃあね」

さらっとそんなことを言ってどこかに歩いていった永瀬くん。
ほんとに、興味持ったってどういうことなんだろう。まあ、気にしてる暇はない。仕事しなきゃ。

彼の言葉の意味をもっと考えていたら、こんなにも振り回されることもなかったのかもしれない。