教育実習生と生徒 (ページ5)

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みんなに調べてもらっている間に教室内を見て回った。

苦戦している子もいるが、さすが学年1のクラス。比較的みんな意味を調べながらも訳せている。

永瀬くんをふと見ると、窓の外を眺めていた。

『さすがだね。もうできたんだ。』

「まあこれぐらいは。Aちゃんってロマンチストなんやなあ？」

そう言いながらにやにやしている永瀬くん。

てかAちゃんって。私は一応先生なんですけど。まあいいか、好きに呼ばせよう。

『ロマンチストって…まあ、なんでもいいでしょ。
はい、みんな訳せたかな？じゃあ～七瀬さん。』

「え、はい。
こんなにもあなたのことを思っている、ということも伝えることができないので、あの伊吹山のさしも草のように燃え上がるわたしの思いを、あなたは知らないでしょう。
で、あっててますか？」

『はい、ありがとう。その訳で大丈夫です。』

「なんでこの和歌が好きなんですか？」

そう聞いて来たのは平野くん。鋭いとこ聞いてくるなあ、

『恋って伝えたいけど伝えられないことってあるじゃないですか。この和歌を見たときにすごく共感しちゃって、あんまり深いことは言わないけど、好きな和歌なんだよね』

「なにそれ、全然伝わらないですよ」

そう言ってみんなは笑ってくれた。なんとなく、みんなの空気が緩んだ気がして、私の作戦は大成功かな。