教育実習生と生徒 (ページ4)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:8,073 hit

. ページ4

まずは、手元にプリントを配る。私が初めに選んだ教材は百人一首である。

『皆さん手元にプリントありますか。今配ったのは百人一首の一覧です。今日はこの中から一人一首、好きな和歌を発表してもらいたいなと思います。』

「先生～僕古典苦手なんですけど。」

そう言って手を挙げたのは平野紫耀くん。

彼もまたクラスでは目立つ存在らしい。彼の言葉にみんながうんうんと頷いた。

『今日の授業はそんなに難しいものじゃないから安心して。みんながどんな和歌が好きなのか先生は知りたいんです。実は和歌って今も昔も同じ気持ちになることができるんですよ。』

そんな説明をしていると、窓際の彼が声を発した。

「じゃあ、先生の好きな和歌はなんですか。」

彼の一言で教室がしーんとなる。私の言葉を待っているのだ。

なんだか、自分の好きなものを伝えるというのは緊張するというか、恥ずかしい。だから、少し考えてから言葉を発した。

『んー、そうだなあ。私は好きな和歌はたくさんあるんだけど、その中でも藤原実方という人の和歌が好きです。皆さんプリントみて、探してみてください。』

ありました～ってみんなが口々に答えてくれる。

『じゃあいきなりだけど、現代語訳してみてください。わからない言葉は辞書使っても大丈夫だから。』