教育実習生と生徒 (ページ19)

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『え、岸くんどういうこと…っ、わけわかんないんだけど』

「この状況でもわかんないなんてさすがA。鈍感すぎ。」

なんか、このセリフどこかでも似たようなこと言われたなと頭をよぎった。

そして、あー、言うつもりなんてなかったのになあーと岸くんがぼやいている。

「俺が好きなのは、Aだから。覚えといて。」

『まって岸くん…っ、わっ…』

そう言って私に近づいた岸くんはおでこにひとつ、キスを落とした。

あまりにも自然すぎて、一瞬何が起きたかわからなかった。

いきなり、色んなことが降りかかってきてパニックの私。

え？私を好き？岸くんが？なんで？キスされた？ってことで頭がいっぱいの私に岸くんはさらに言葉を続けた。

「本当は今すぐにでも俺のものにしたいって思うけど、まあ俺ら実習中だしな。
無事に実習終えてから考えて見てよ。
今言っとかないと、ちょっと色々めんどそうだから今言っただけだし、明日からは今まで通りな。」

そんないきなり、明日からまた普通でなんて言われたって普通にできる気はしない。

意識しないわけがない。岸くんは勝手だ。

岸くんは自分の思っていたことを言えてスッキリしたのか、腕から解放してくれた。

「じゃあ、また明日な。気をつけて帰れよ」

『あ、うん。また明日』

何も言う暇もなく、笑顔の岸くんはそそくさに帰ってしまった。

1人残された真っ赤な顔の私。

手を頬に当て、隠すように帰路についた。

家に帰ってからも考えるのは2人のことばかり。

授業の準備はなんとか終えれたが、実習から気持ちが離れると2人のことを考えてしまう。

1日に2回も告白されるなんてことは、もちろん今までに経験したことがない。
どうしたらいいのかわかんなくてそわそわしてしまう。

永瀬くんでいっぱいだった頭に岸くんのことも入ってきて私の頭はパンク寸前だ。

この先私はどうしたらいいんだろう。岸くんと普通に接することができるのだろうか。

ただ、実習に私情は挟めない。
岸くんも実習を第一にっていう考えは一緒だ。割り切って明日から普通に接する、そう決めて眠れない目を無理やり閉じた。