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『ほんまに、ごめんな。A俺は、ただお前と…』
『一緒におりたい。これから先もずっと…』
『Aとあの海で出逢ったのは運命やから…』
『覚えてる?初めて逢った時、Aの苗字聞いて、親近感わくって言ったの…』
『はい…。』
『萩月は、じいちゃんがやってた骨董屋の名前で…。如月は、ばあちゃんの実家の呉服屋の名前なんや…。2人は出逢って、大恋愛して、結婚した。凄く仲の良い2人やったから。俺も幼い頃から、そんな人と出逢いたいって、ずっと思ってた。』
私は黙って聞いていて、頬に涙が流れていた。
『あの日、仕事で上手くいかなくて…。自暴自棄になって海見てたら。女の人の様子がおかしい、助けなあかんと思って。A見た時に、驚いて。名前聞いた時に、やっぱりと思った。』
『A、俺の側におって…それだけが俺の望みや…』
『長々とごめんな。おやすみ。』
電話を持ったまま。ベッドに倒れこむように伏せて、泣いていた。
2人の気持ちが、優しい声が、しんどくて、辛くて。私は、選ぶことなんて出来ない。
気持ちを落ち着かせたい、ただ一心に。スマホの画面を押した。
『A、どした?』
『お願いがあるんですけど…』
『分かった。電話やと、Aの事が気になるから…。そこに行ってもええか?』
私は部屋の番号を伝えた。
部屋のチャイムがなって、すぐに出た。
私を見ると、優しく微笑んで、
『そんなに泣いて…。可愛い顔が…可哀想に。』
頭を優しくポンポンした。
部屋に入ると、程よい距離で
『ちゃんと、ヒナには言って来てるから。大丈夫やからな。』
『すばるさん、わざわざ。すみません』
優しい声で、
『俺が言ったんや、Aがシンドイ時には呼んでなって…。』
『話聞いたる。何があったん?』
すばるさんとソファーに座って、話を聞いてもらってた。言葉に詰まる私に、そっと手を重ねて、優しく相槌をしながら聞いてくれた。
『それは 、困ったな。あいつら、男前な事言ってるけど…。結局、Aを悩ましてるから。うん。ほんまに…あかんわ。』
『A…』
すばるさんを見上げると、優しい表情で
『今日は、何も考えかったらええわ。3人共、感情的になってるから。ええ方向に、話が進まんと思うから…。』
『では、勝手にリクエストにお応えして…』
囁くような、綺麗な声ですばるさんは歌い始めた。
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作者名:ショコラ | 作成日時:2017年4月25日 2時