萩月《∞》2 (ページ43)

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暫くして、腕を緩めると

『A、ごめんな。ありがとう、落ち着いた。』

侯隆さんを見ると、いつもの笑顔と違ったから

『何かありましたか?大丈夫ですか?』

優しい表情になって

『Aは、ほんまに優しい子やな。いつでも、俺を気にかけてくれて…』

私を抱きしめると、小さな声で

『ずっと、朝から。Aが側の居るのに、触れれないから。嬉しかったんや、やっと二人きりだし…』

侯隆さんの顔を見ようとしたら、ギュッとされて

『ええから。恥ずかしいから、今俺の顔見んといて。』

身体が一気に熱くなったから、顔も真っ赤なんだろうなと思って

可愛らしい、侯隆さんを見れなくて残念だった。

落ち着いたのか、侯隆さんが私の手を優しくとると

『蛍、見に行こうか?』

『はい。』

手を繋いで、蛍の川まで歩いた。

だんだんと、暗くなっていく道で、怖くて思わず

侯隆さんにくっ付くと。肩を引き寄せてくれて

私の怖さを和らげる為に、面白い出来事を話してくれていた。

黄色の淡い光がポツポツ見え出して

川に着く頃には、沢山の蛍の光で、色々な場所が光り輝いてた。

2人で夢中になって見ていた。

本当に綺麗で、自然の光だから、淡くて儚くて

見にきて良かったなと思った。

長い時間は疲れるだろうと、優しい侯隆さんが言ってくれて

旅館に戻って、受付に用事があるからと、

侯隆さんと受付の建物に入ろうとしたら

『ヨコ達どこ行ってたん?』

村上さんの声がしたから見ると、

驚いて、私も侯隆さんも声が出なかった。

『今から、村上くんの部屋で飲むんやって!』

ニコニコ笑顔の隆平さんが居た。

私達が何も言わないから、隆平さんが

『ここの近くで、写真の用事があって。朝に、すばるくんに旅館の名前聞いてたから、来たんや。それで、旅館に行く前に村上くんに電話したら、オーナーさん家に居るって聞いて。お酒持ってお邪魔してきた所。』

『そうなんや…』

あきらかに、侯隆さんは不機嫌な声になって。私を隠すようにして前に立った。

でもお構いなしに、隆平さんは私に近付いて来て、優しく微笑んで

『Aちゃんも居たんやね。』

じっと私を見つめると、

『浴衣、似合ってる。可愛いな…』

私はどう答えようかと困ってたら、

『A、さっきのログハウスの店で、忘れ物してたみたいやから。ちょっと来て、確認して…』

すばるさんが、私をその場から連れ出した。