萩月《∞》2 (ページ34)

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侯隆さんに気付いてもらえないし、すばるさんには微笑まれて、手を重ねられたままだし、私はドキドキが止まらないから、外の風景でも見て、少しでも気持ちを落ち着けようとしていた。

暫くして、すばるさんの手が動いたから、離してくれたと安心していたら、ずっしり肩に重みがきた。ビックリして、ゆっくり肩を見ると、私に寄り添って、すばるさんが眠っていた。

ますます、ドキドキが増してきて、どうしようかと思っていたけど、イヤホンから流れる綺麗なすばるさんの歌声と、車の優しい振動で、心地良さから眠りに誘われるように、いつの間にか寝ていた。

私が眠った時に村上さんが、後ろが静かな事に気付いて、

『ヨコ、Aとすばる寝てるで。しかも、2人仲良さそうに寄り添って。』

『ほんまや…。あとで、すばる説教やな!!』

『でも、ヨコ。2人の寝顔、子供みたいでめっちゃ可愛いやん。』

『おん。まあ、Aが可愛いから、すばるが良く見えるだけやろ。』

『素直やないな。焼きもちやな…。』

『うるさいわ!!』

そんな会話をされてる事も、全く知らないまま、私はぐっすり眠っていた。

優しく肩を揺らされて、ゆっくり目を開けると、侯隆さんが私の顔を覗き込んでいて、あまりの近さと綺麗な顔にビックリしていると、

『A、ごめんな。驚かせて。旅館に着いたから、起こしたんやけど…。』

困った表情になったから、私はすぐに

『ごめんなさい。侯隆さん、運転で大変なのに寝てしまって。』

侯隆さんは、くしゃっと優しい笑顔で、

『大丈夫やで。気にせんでええよ。それに…。』

『久しぶりに、可愛いAの寝顔見れたから、嬉しかったし♪』

頭を優しくポンポンされて、私はドキドキして、何て答えたらいいか分からなかった。

『ヨコ!A、起きたか?オーナーの所へ行くで!!』

大きな声で村上さんに呼ばれて、

『A、ヒナが煩いから。取り敢えず、旅館に入ろう。』

私は頷くと、車を降りた。そして、侯隆さんと一緒に旅館に入る事にした。