萩月《∞》2 (ページ32)

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『ヨコ、早く出んと。約束の時間に遅れるで!!』

村上さんが、大きな声で叫んだ。侯隆さんはすぐに、

『分かった!!すぐ戻るわ。』

私の手をそっと離すと、急に近付いてきたからビックリしてると、低く囁く声で、

『旅館に着いたら、二人きりになれるから。ゆっくりしよな。』

私は恥ずかしくて、頷くのが精一杯だった。

車に2人で戻ると、運転席に侯隆さんが乗ろうとして、

『なんで、ヒナは後ろの席に移動してないんや。Aが、助手席に座れへんやんか。』

『ヨコ、何言ってるん?俺の車やし。それに、新しい旅館の場所。俺しか知らんから、ナビするって言うたやん。』

『はぁ、そんなん知らんし。後ろの席からでも、指示できるやないか!!』

『難しいやんか!!隣に座った方が、何かと対応出来るし。』

『じゃあ、ヒナが運転して。すばるが助手席に座ればええやないか!!』

すぐに、すばるさんが

『えー。後ろの席の方が、ゆったり座れるから。嫌やー。』

『ヨコ、諦め。Aも突っ立ったままじゃ、可哀想やないか。』

私を侯隆さんは見ると、

『A、ごめんな。』

『大丈夫ですよ。』

すばるさんが、後ろの席のドアを開けて、自分の席の隣をポンポンすると、

『Aちゃん、おいで。はよ座り。』

くしゃっと優しい笑顔で言ってくれた。

『ありがとうございます。』

私はゆっくり、隣に座った。

侯隆さんは、まだ納得いってなかったみたいだったけど、村上さんに促されて、車を発進させた。