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【Aside】
涙の痕が分からないように軽く化粧を直して、気を紛らわすように食材を買いながらタクシーで高専に帰宅した。
夕方だったけど幸い悟はまだ帰っていなくて、シャワーを浴びてスッキリしてから夕飯の支度をする。
今夜は魚を塩焼きしようと買ったし、たまには炊き込みご飯にしよう。
何も考えなくていい様に具材の野菜を刻んでいく。
椎茸、人参、牛蒡…あと蒟蒻と油揚げも入れて…
お母さんが良く作ってくれた大好きな味だ。
ふと手に温かいものが落ちる。
自分の涙だ。
ダメだ私……結局考えてるじゃないか…
考えないようにしなきゃって思っているのに…
いや、違う…それは逃げてることになるんだ。
ちゃんと受け入れなければ…変えようのない事実なんだから。
涙を適当に拭って刻んだ具材をお米や調味料と一緒に炊飯器にセットする。
包丁やまな板を洗い、何か副菜を作ろうと頭を回そうとするけど何も思いつかない。
寂しさが込み上げてきて、涙が溢れてくる。
グッと堪えていたけど限界だった。
堰が切れたように涙が次々に頬を伝う。
私はその場にしゃがみ込んで止まらない涙を拭った。
A「……ぇ…笑え…笑え…」
涙を止めようとしてもどうにもならなくて、一人泣き続ける。
きっと酷い顔になっている。
せめて悟が帰ってくるまでには止めなくちゃ…
目元も冷やして、泣いた痕跡を消さなきゃ…
夕食は悠仁くんも一緒に摂るんだから変な心配させないように…
鼻を啜り、顔を洗って無理やり止めようとしたけど意味がない。
いっそのこと気が済むまで泣いた方が早いだろうか。
ソファに座って声を押し殺して泣き続ける。
時刻はまだ18時前…悟が帰ってくるのはいつも19時を過ぎることが多いから…
その油断が大きく裏切られる。
五条「Aー!たっだいまー!」
ドアが開いて、悟のご機嫌な声が聞こえてくる。
まずい…見られてしまう。
一先ず涙を拭い、笑顔を取り繕って彼を迎えた。
A「おかえり悟!今夕食の準備してる途中だからちょっと待ってて…」
私の顔を見た悟は口角を下げ、足早に私に近付いてくる。
そして私の頬に手を添えながら親指で目元をなぞった。
五条「何で泣いてるの?」
ああ、神様…今日はとことん冷たいですね。
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更紗和金(プロフ) - マリオットさん» 一気みしてくださったとは…とても嬉しいです。こちらこそこんな自己満足作品を読んでいただきありがとうございます! (2022年10月2日 18時) (レス) id: b1ab373c3f (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 一気みしました!!すごいです!この小説書いてくれてありがとうございます!! (2022年10月1日 11時) (レス) @page3 id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:更紗和金 | 作成日時:2022年9月25日 18時