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【五条side】
「次のお客様どうぞー!」
テンションの高い女性スタッフに呼ばれ、ゴンドラの前に行く。
やっと順番が回って来た。
夕暮れには間に合うからいいけど。
「足元にお気を付けくださーい」
目の前にゴンドラが来るとスピードがゆっくりになり、扉が開く。
レディーファーストと言いたいところだけどこれは俺が先に乗り込んで手を引いた方が良さそうだ。
五条「先乗るぞ」
A「うん」
五条「…ん。おいで」
乗ってすぐに手を差し出した。
Aはニコッと笑って俺の手に自分の手を重ねる。
無理のない程度に引っ張って、Aがゴンドラに乗るとそのまま対面の席へ座らせた。
俺も座ってとりあえず一段落。
A「ありがとう」
五条「おう」
手…放したくねぇな…
あーでも、Aは鬱陶しいと思うかな…
A「わあ…!綺麗なオレンジ色!」
Aは繋いでいる手のことは気にせず、景色を見てパッととびきりの笑顔を浮かべる。
じゃあこのまま繋いでても、いいか?
A「すごいねー。海に太陽が溶けていくみたい。こういうの幻想的って言うのかな」
五条「…そーだな」
A「暗くなり始めてる空がグラデーションになってて綺麗だね。薄い雲が混じってるのも…」
五条「なあ…」
景色ばかりじゃなくて…
五条「俺も見ろよ…ッ」
クソッ…顔熱っ…
繋いだまま手に指を絡めて恋人繋ぎに変えた。
するとAの頬と耳が赤くなる。
A「ぁ…ご、ごめ…」
五条「俺は…」
Aの隣に移動して彼女に顔を近付ける。
どんどん顔が熱ぃ…クソ…カッコつかねえ…
五条「お前にこうするために観覧車に乗ったんだけど…」
A「え、ん…」
強引にキスをする。
触れるだけのシンプルなキスだけど、その代わり長い時間そのままでいた。
五条「……A、好き」
A「さっ、悟…」
五条「もっとキスしていい…?」
A「ま、待って…!」
五条「はあ…?何で?」
途端にAが慌て出す。
今この空気で踏み止まれとか寧ろ無理だろ。
五条「無理。するから」
A「待って…!本当に!」
五条「だから何で?」
A「お向かいの子供たちが見てる…っ」
五条「はっ?」
俺が座っていた方向を見たら四人家族の子供二人がガラスに張り付いてこっちを見ていた。
両親が慌てて「見るな!」と引き剥がす。
Aが片手で顔を隠し、俯いた。
…んの、クソガキども…ッ
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作者名:更紗和金 | 作成日時:2023年12月18日 21時