検索窓
今日:8 hit、昨日:3 hit、合計:235,470 hit

ページ42

「………誰だろう?」


首を傾げただいちゃんが、訝しげな
表情で目配せをする。
当然だ、こんな時分に来訪者等ある筈も
無い。


しかし、


「……………もしかして、

“待ち人”かもしれない 」



俺には心当たりがある。



“えっ?”驚いた様にこちらを見上げただいち
ゃんを制し、声の主の元へと向かう。
締め切っていた雨戸をガタガタと揺らし、
震える思いを堪えながらゆっくりと闇夜の隙
間を覗き込んだ。



「………ごめんね、こんな時間に」



目深に帽子を被った黒い影が紳士的な一礼を
して、傍らに立つ少し小さな影が腕を組んだ
まま胸元からカチャリと何かを取り出した。



「遅くも無いだろ、夜はこれから
もっともっと深くなるんだぜ。

なぁ、裕翔?」



金色の懐中時計を眺めた山田君は、そう
言って俺の名を呼んだ。


「俺達の生きている世界と一緒に
しちゃいけないよ。

それぞれの場所にはそれぞれの
時間が流れているものだから。

………でも、
遅くなって(・・・・・)ごめんね、」


圭人は立ち尽くしたままの俺を見てにすまな
そうに眉を寄せた。
俺の着物の両袖には受け止めた際の喀血が
未だに赤い染みを作っている。


「圭人、謝ることじゃないだろ。
何も遊んでいたって訳じゃなし、」


山田君は、圭人を軽く叱責すると縁側から
するりと室内に足を踏み入れた。
迷いの無い滑らかで素早い所作だった。


「ほら、お邪魔しようじゃないか。

その為にこうして往診に来たんだろ?」



未だか、未だかと待っていた。
降り止まない雨音に心揺さぶられ、
いつ終わるとも知れない当たり前の日々に
怯えながら待ち望んでいた相手だった。

俺という人間が見極められた末の結果を待
つのは、不安でもあったけれど、



「…………来てくれて、


本当にありがとうございました」



圭人が救うべき命は、あの色街に数え切れな
い程存在していてそのひとつひとつが誰かに
とってかけがえの無い意味を持つ。
優越なんて付けられない、命の重みは皆平等。

早く早くと急く思い、どうして今なのだ
と恨めしく思うより約束通りこうして訪問
して来てくれた事に感謝の念を抱く。


いのちゃんが待つ寝室へと二人を案内する。



「……裕翔、どなた?」



枕元でしっかりと手を握っていただいちゃ
んがこちらを振り返る。



「“お医者様”だよ、だいちゃん」

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (476 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
876人がお気に入り
設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ぴよ(プロフ) - みたばさん» コメントありがとうございます(*´ー`*)このお話は全員参加で色々な想いを描きたかったのでそう思って頂けてとても嬉しいです。私もみたばさんの“時雨る…” 等読ませて頂いていて素敵な世界観に引き込まれています。頑張って下さいね♪ (2017年6月29日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みたば(プロフ) - 初めてコメントさせていてだきます。それぞれから見る世界の見え方や、それぞれの抱く思い、そしてどこまでも美しいいのおちゃんに心がやられっぱなしでした。素敵なお話有難う御座いました。お体もどうぞご自愛ください。 (2017年6月28日 11時) (レス) id: c12d4af081 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 皆さんと世界観を共有出来たのも嬉しかったです。ちょうど出産に重なり温かいお言葉にも感謝しています。幸い母子共に健康で健やかに過ごせています。またムリのない程度にお話も書けたらと思っています。これからも宜しくお願いします** (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 初めまして、コメントありがとうございます( ´∀`)読んで貰えるだけでも十分ありがたいのですが、やはり感想を頂けると励みになりますし書いて良かったなぁと思います♪私もあの写真からここまで長いお話になるとは想像していなかったのですが無事完結出来て満足です。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» つもりでした。夏の暑さはまだ先ですが蝉の声響くいのちゃんの庭を想像して書いてみました。あんな風に二人は皆に助けられ穏やかな時を過ごしているのだと思います。秋はどんな日々が待っているのだろうと想像も膨らみますね☆ (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年3月7日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。