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僕だってひかる先生みたいに
気持ち良くしてあげたい。

上手くはないかもしれないけど、
快感に赤らむ先生を下から見上げたい。



今、この瞬間は僕だけの先生だって

馬鹿みたいな夢を見させてよ



流れ落ちた涙が口端を濡らす。
しょっぱい、僕の涙もちゃんと味がす
るんだと思った。



「………なぁ、知念。

俺は、ひかるがいつ来るのか
気配を感じる事は出来ても、

どこから来るのか、本当は誰のもの
なのか、肝心な事はただのひとつも
知らないんだよ。」



涙をそっと指先で拭った先生は、ゆっくりと
した所作で座り込んだままの僕を立たせると
ひょいっと膝の上に乗せた。
向かい合わせ、普段遥か高みにある先生と僕
の視線とが同じ高さで交わる様に。



「ひかると一緒に“世の不思議“を追い
かけて来たけれど、

結局は分からない事ばかり。

俺は、知念は尽くしてもらう程
大した男じゃない。」



そう言った先生は、子供みたいに困った顔
で眉を下げた。
いつも自信に溢れている先生のキリリと
した眉が情けなく垂れる様に愛しさが込み上
げてくる。


なんだろう?
胸の中に流れ込むとろとろしたそれ。




「だから、

俺なんかの為に泣かないでくれよ。」



……

……


僕の記憶は、先生から始まる。
3年前、耳のずっと奥の奥で突然声が聞こえて
僕は目を開けた。


“ 今日から宜しくな、知念

厄介なところに来ちまったなぁ ”



金色の髪がキラキラしていた。
やや高い伸びやかな声。
雑多とした薄暗い室内。
煙草をくぐらせ目を細めた先生は、
確かに僕だけ(・・)を見ていたのだ。



雛鳥が初めて手にする絶対的な安心感。
僕はこの人のために生きようと思った。
この人が喜ぶなら、この人の力になれる
なら何だってする。


………僕は薮先生に生かされている。



「本当は、知念を“おとな”にするつもり
何て無かったさ。

折角、忘れちまった過去を思い起こさせ
て何になる。


ずっとずっと“子供”でいれば、
こんな風に泣かせる事も無かったろう。」


それは、先生の罪じゃない。
求めたのは、お願いしたのは僕だ。


だって、僕は初めから知っていたんだもの。
“大人”がどうやって心の隙間を埋めるのか、
そのためにどんな愚かな行為に走るのか。

全部、知っていたんだもの。




「……………先生が僕を連れ出してくれた
んですよね? 」

*→←*



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - みたばさん» コメントありがとうございます(*´ー`*)このお話は全員参加で色々な想いを描きたかったのでそう思って頂けてとても嬉しいです。私もみたばさんの“時雨る…” 等読ませて頂いていて素敵な世界観に引き込まれています。頑張って下さいね♪ (2017年6月29日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みたば(プロフ) - 初めてコメントさせていてだきます。それぞれから見る世界の見え方や、それぞれの抱く思い、そしてどこまでも美しいいのおちゃんに心がやられっぱなしでした。素敵なお話有難う御座いました。お体もどうぞご自愛ください。 (2017年6月28日 11時) (レス) id: c12d4af081 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 皆さんと世界観を共有出来たのも嬉しかったです。ちょうど出産に重なり温かいお言葉にも感謝しています。幸い母子共に健康で健やかに過ごせています。またムリのない程度にお話も書けたらと思っています。これからも宜しくお願いします** (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 初めまして、コメントありがとうございます( ´∀`)読んで貰えるだけでも十分ありがたいのですが、やはり感想を頂けると励みになりますし書いて良かったなぁと思います♪私もあの写真からここまで長いお話になるとは想像していなかったのですが無事完結出来て満足です。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» つもりでした。夏の暑さはまだ先ですが蝉の声響くいのちゃんの庭を想像して書いてみました。あんな風に二人は皆に助けられ穏やかな時を過ごしているのだと思います。秋はどんな日々が待っているのだろうと想像も膨らみますね☆ (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年3月7日 11時

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