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山田君は歩くのが早かった。

いのちゃんとゆっくり散歩する事に
慣れきった俺は、小さな彼の背を追う
のに精一杯でどこをどう進んでいるのか
考える余裕も無い。

反対側の路面電車に乗り込んで、降りて
入り組んだ道の裏側へ裏側へ………

それでも山田君は、揺るぎない道標で
俺の前から姿を消すことは無かった。



「随分可愛い子がいるわね、

どこから迷い込んできたのかしら」


出会い頭にそう声を掛けられて、
髪を撫でられた俺は反射的に身を固くした。
艶かしい夜の香りを纏った女の人が2人、
こちらに微笑みかけてくる。

露になった白い肌が浮き上がる様に
妖しく輝いてみえた。
思わず後ずさった俺の傍らで山田君の声が
した。


「駄目、これは俺の連れなの。

あんまりからかわないでくれよ、
泣いちゃうだろ。」


「なんだ、涼介のお客様かぁ。
折角可愛い子を見つけたと思った
のに。

あんたこそあんまり“先生“を
困らせちゃ駄目よ。」


知り合いらしく軽口を交わした後、
女の人は“ふふっ“と口元を綻ばせ楽しげに
手を振った。


「………またね、可愛い子。」



残り香が、ふわふわといつまでも
辺りに漂っている。
呆けた様に立ち竦む俺の肩を山田君が
叩いた。



「………なぁ、裕翔はどう思う?

ああやって生きる(ひと)、」



まだ日が高い為、そこは本来の色を出し切
ってはいなかったがひしめき合う小さな店々
や姿を見せ始めた客とおぼしき人影が
“買う者“と“買われる者“とが共存する街の
在り方を告げていた。

勿論、今までこういった場所に足を踏み入れ
た事は無かったし直接に触れ合った事も無い。


春を売る何てとんでもない話だと、
今までの俺なら目を背けていたのかもしれな
いけれど



「………………立派だな、と思う。

自分の生き方を自分で決めるって
強い人にしか出来ないことだから。」




どうしたって生き抜いてやるんだと
真っ直ぐな強さと覚悟を持った彼女等が
美しいと思えた。



「………ふふ、それが分かるんなら
上等だ。

連れてってやるよ、
裕翔が探してる“場所“ にね。」



山田君は、満足そうに笑った。
その表情は決して人形などでは無く、
子供みたいにあどけなかった。

更に奥まった場所、雑多としたビルの外階段
を上る。
押すのか引くのかはっきりしない動きで山田
君は、軋む扉に手を掛けた。

*→←第十一話



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - みたばさん» コメントありがとうございます(*´ー`*)このお話は全員参加で色々な想いを描きたかったのでそう思って頂けてとても嬉しいです。私もみたばさんの“時雨る…” 等読ませて頂いていて素敵な世界観に引き込まれています。頑張って下さいね♪ (2017年6月29日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みたば(プロフ) - 初めてコメントさせていてだきます。それぞれから見る世界の見え方や、それぞれの抱く思い、そしてどこまでも美しいいのおちゃんに心がやられっぱなしでした。素敵なお話有難う御座いました。お体もどうぞご自愛ください。 (2017年6月28日 11時) (レス) id: c12d4af081 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 皆さんと世界観を共有出来たのも嬉しかったです。ちょうど出産に重なり温かいお言葉にも感謝しています。幸い母子共に健康で健やかに過ごせています。またムリのない程度にお話も書けたらと思っています。これからも宜しくお願いします** (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 初めまして、コメントありがとうございます( ´∀`)読んで貰えるだけでも十分ありがたいのですが、やはり感想を頂けると励みになりますし書いて良かったなぁと思います♪私もあの写真からここまで長いお話になるとは想像していなかったのですが無事完結出来て満足です。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» つもりでした。夏の暑さはまだ先ですが蝉の声響くいのちゃんの庭を想像して書いてみました。あんな風に二人は皆に助けられ穏やかな時を過ごしているのだと思います。秋はどんな日々が待っているのだろうと想像も膨らみますね☆ (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年3月7日 11時

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