＊ ページ26
「………………ぇ、」
山田君の瞳はひかる君の様に妖しく金色
に輝いて等いなかったけれど、
その物言いと眼差しには射るような鋭さと
逃れ難い強さが感じられた。
射竦められた俺は、
やっぱり動く事が出来ない。
「見れば分かるよ、裕翔が仕事の為に
此所を訪ねてきた訳じゃ無い事くらい。
じゃあ何かって、
それは俺の口から言う事でも無い。」
対峙する綺麗な人形は、
そう言って口元に優雅な笑みを浮かべた。
吹き込む風は生温い筈なのに、
身体を巡る冷えた様な感覚に上手く言葉が
出てこない。
俺は、今何のために
此所にいるの。
答え何てひとつしか無いのに。
「………あ、の、俺は、」
絞り出す様に口を動かしたその時
“ボーン、ボーン、ボーン”
静寂を破ったのは壁に掛けられた柱時計
の鳴る音。
応接スペースの隅っこで銀色の振り子は
その間も確かに時を刻んでいたらしい。
鼓膜を震わす重い音を聞きながら、
俺達は再び時が動き出すのを待った。
「ただいま、今戻ったよ。」
しかし次に時を動かしたのは、
どちらでも無い低めに響く甘い声。
開かれた扉のその向こうに、スーツ姿で
白い中折れ帽を被った背の高い
「お帰り、雄也。
お客様が来てるよ。」
山田君の声に目線を動かした彼は、涼やか
な目許でこちらを確認すると帽子を取り深々
と頭を下げた。
溢れ出した茶色の髪がふわりと揺れる。
「………これは、失礼。
ようこそいらっしゃいました。」
“ 社長の高木 雄也です ”
ひかる君から受け取った名刺に記されて
いた彼の名前。
「お待たせしてすみません。
うちの山田が非礼を働いてなきゃ
良いんだけど。」
見た目に反し、子供の様にはにかんで砕けた
調子で言葉を繋げる彼に虚を突かれた気持ち
になった。
「………心外だなぁ、とびきり
旨い紅茶をご馳走したばかりだぜ。」
“なぁ？”山田君は目配せしながら
楽しげに調子を合わせてくる。
「………あっ、はい。
非礼だなんてとんでもない。
美味しいお茶をご馳走になりました。」
こくこく頷きながら必死に返答する俺を
見て高木君はまた笑った。
「随分と真っ直ぐなお客様だね。
さて、御用件を聞かせて下さい。」
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ぴよ(プロフ) - みたばさん» コメントありがとうございます(*´ー｀*)このお話は全員参加で色々な想いを描きたかったのでそう思って頂けてとても嬉しいです。私もみたばさんの“時雨る…” 等読ませて頂いていて素敵な世界観に引き込まれています。頑張って下さいね♪ (2017年6月29日 17時) (
レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みたば(プロフ) - 初めてコメントさせていてだきます。それぞれから見る世界の見え方や、それぞれの抱く思い、そしてどこまでも美しいいのおちゃんに心がやられっぱなしでした。素敵なお話有難う御座いました。お体もどうぞご自愛ください。 (2017年6月28日 11時) (レス) id: c12d4af081 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 皆さんと世界観を共有出来たのも嬉しかったです。ちょうど出産に重なり温かいお言葉にも感謝しています。幸い母子共に健康で健やかに過ごせています。またムリのない程度にお話も書けたらと思っています。これからも宜しくお願いします＊＊ (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 初めまして、コメントありがとうございます( ´∀｀)読んで貰えるだけでも十分ありがたいのですが、やはり感想を頂けると励みになりますし書いて良かったなぁと思います♪私もあの写真からここまで長いお話になるとは想像していなかったのですが無事完結出来て満足です。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» つもりでした。夏の暑さはまだ先ですが蝉の声響くいのちゃんの庭を想像して書いてみました。あんな風に二人は皆に助けられ穏やかな時を過ごしているのだと思います。秋はどんな日々が待っているのだろうと想像も膨らみますね☆ (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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