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第十話 ページ23

ー “道案内” して貰えるってのは
金持ち供が考えそうな甘えた発想だね。

良いかい?

辿り着けるかどうかは自分次第。
その先に何があるのか見極める事
が出来るのはつまるところ、


裕翔、君だけなんだよ……… ー



金色の月を映したひかる君の眼。
長く伸びる影にすっかり囚われた俺は、
ただただその場に立ち尽くすのみ。


ひかる君は、そう言って笑うと
懐にすうっと手を差し入れて
それ(・・)を俺に手渡した。

……

……


「………ただいま、」


「お帰り裕翔、大丈夫だった?」


満月のお陰で帰り道には迷う事無く
俺は、いのちゃんの家に辿り着いた。
縁側に腰掛け夜空を見上げながらいのちゃん
は俺を待っていてくれた。

だいちゃんが早めの誕生祝いに贈ってくれ
た水色に流し模様のショールが良く似合う。
だいちゃんのお店で俺が初めて手に取った
代物だ。


「うん、ちゃんと届けられた。

………夜は冷えるよ、中に入ろう? 」


薄い肩を抱きそっと促すと、いのちゃんは
コクリと素直に頷いた。


「さっきまで曇っていたのに、

こんなに綺麗な満月が見れるなんて
不思議な夜だねぇ。」


名残惜し気にうっとりと空を見上げるいの
ちゃんは、とても美しかった。


「………おやすみ、裕翔。」


ランプを吹き消すと、傍らに眠るいのちゃ
んの頬におやすみの意で口付けをする。
異国ではそうやって毎夜愛を伝えるのだと
いつか読んだ本に書いてあった。


「………いのちゃん、俺明日ちょっと
用事が出来たんだ。

少しだけ出掛けてきても平気?」


「………………うん、勿論。

俺は大丈夫だからゆっくり行って
おいで、」


暫くすると規則的な寝息が聞こえてくる。
今日を無事に終えた事に感謝しよう。

明日も明後日も、来月も来年も、
来世までだって一緒に生きていたいから。


俺は寝着の懐に忍ばせていた白い紙を取り出
した。
夜道に慣れた目は、暗がりでもまだ充分に
それを捉える事が出来た。

社交界では頻繁に交換され、
俺も父に促され何度も頭を下げたものだ。
小さなそれにはこれまで彼等が積み上げて
きた自負や生きざまが詰まっている。



ひかる君から受け取ったそれ(・・)
は、一枚の名刺だった。
貿易を生業とする旨を表す社名と港近くに
立つビルの住所。



見極めるのは俺、

ならばそこを訪ねるしか無い。

*→←閑話



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - みたばさん» コメントありがとうございます(*´ー`*)このお話は全員参加で色々な想いを描きたかったのでそう思って頂けてとても嬉しいです。私もみたばさんの“時雨る…” 等読ませて頂いていて素敵な世界観に引き込まれています。頑張って下さいね♪ (2017年6月29日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みたば(プロフ) - 初めてコメントさせていてだきます。それぞれから見る世界の見え方や、それぞれの抱く思い、そしてどこまでも美しいいのおちゃんに心がやられっぱなしでした。素敵なお話有難う御座いました。お体もどうぞご自愛ください。 (2017年6月28日 11時) (レス) id: c12d4af081 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 皆さんと世界観を共有出来たのも嬉しかったです。ちょうど出産に重なり温かいお言葉にも感謝しています。幸い母子共に健康で健やかに過ごせています。またムリのない程度にお話も書けたらと思っています。これからも宜しくお願いします** (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 初めまして、コメントありがとうございます( ´∀`)読んで貰えるだけでも十分ありがたいのですが、やはり感想を頂けると励みになりますし書いて良かったなぁと思います♪私もあの写真からここまで長いお話になるとは想像していなかったのですが無事完結出来て満足です。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» つもりでした。夏の暑さはまだ先ですが蝉の声響くいのちゃんの庭を想像して書いてみました。あんな風に二人は皆に助けられ穏やかな時を過ごしているのだと思います。秋はどんな日々が待っているのだろうと想像も膨らみますね☆ (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年3月7日 11時

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