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猫という生き物は、自由気儘な様でいて
存外いじらしい。
頭を撫でてやるとミケは気持ちよさそう
喉を鳴らした。


「あ、忘れ物だ。」


雨戸を閉めようとしたいのちゃんが
声を上げた。
縁側には、ひかる君愛用のステッキが
ポツンと置き去りにされている。


「俺、追いかけて届けてくるよ。」


今ならまだそれ程遠くには行っていない筈。
いのちゃんからステッキを受け取り、
俺はすっかり暗くなった夜道へと駆け出した。


「気を付けるんだよ、」


いのちゃんの声が背に優しく響いた。


………

………


生温い夜風が吹く。
威勢良く飛び出してはみたものの俺は、
すっかり途方に暮れていた。

板塀に取り囲まれた古い住宅街は、
どこを見渡しても皆同じ風景に見える。
日中はあちらこちらから聞こえる生活音が消
えた夜のそこは迷路の様で、どんよりとした
曇り空が一層俺を混乱させた。

しかも、
ひかる君は足音をたてず歩くのだから困る。
不安を拭う様に手にしたステッキで道先を
探りながら前へと進んだ。


………あ、


そこが見知った風景だと気付いたのと、
雲に隠れていた月がゆらゆらと真ん丸の姿を
現したのはほぼ同時だった。
朧気だった視界が徐々に晴れ、目の前には
いのちゃんの家へと繋がる件の三叉路が広
がっていた。



「………ひかる君、?」



一番左の道を行くひかる君の後ろ姿。


「……あの、忘れ物です!」


その背に恐る恐る声を投げ掛ける。
ゆっくりとこちらを振り返るひかる君の
横顔を月の光が照らしていく。



ーひかる君の大きな瞳には、
黄金色のまぁるい月が映っていたー




“チリンッ”



どこかでまた鈴の音が聞こえる。
俺は、その場に呆然と立ち尽くしていた。
どうした訳か身体が一向に動かない。


ひかる君は、つかつかとこちらへ
歩み寄り俺の手からステッキを受け取った。


「助かったよ、ありがとう。

俺は道を覚えないから、行く先は
すべてこの子が知っていてね。

何処に行くにも必要不可欠なのさ。」


金色の瞳を輝かせひかる君がにやりと笑う。
ステッキをクルクルと回し楽しげに円を描いた。


「御礼をしなくちゃいけないね、

何が良いかなぁ、ねぇ裕翔?」



“ゆうと”

初めて彼に名を呼ばれ
背筋がゾクリと波立った。




「………………あの、

“道案内”をお願いしたいんです……」



金色の眼をした(ひかる)
満月の夜に請う

閑話→←*



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - みたばさん» コメントありがとうございます(*´ー`*)このお話は全員参加で色々な想いを描きたかったのでそう思って頂けてとても嬉しいです。私もみたばさんの“時雨る…” 等読ませて頂いていて素敵な世界観に引き込まれています。頑張って下さいね♪ (2017年6月29日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みたば(プロフ) - 初めてコメントさせていてだきます。それぞれから見る世界の見え方や、それぞれの抱く思い、そしてどこまでも美しいいのおちゃんに心がやられっぱなしでした。素敵なお話有難う御座いました。お体もどうぞご自愛ください。 (2017年6月28日 11時) (レス) id: c12d4af081 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 皆さんと世界観を共有出来たのも嬉しかったです。ちょうど出産に重なり温かいお言葉にも感謝しています。幸い母子共に健康で健やかに過ごせています。またムリのない程度にお話も書けたらと思っています。これからも宜しくお願いします** (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - upmamaさん» 初めまして、コメントありがとうございます( ´∀`)読んで貰えるだけでも十分ありがたいのですが、やはり感想を頂けると励みになりますし書いて良かったなぁと思います♪私もあの写真からここまで長いお話になるとは想像していなかったのですが無事完結出来て満足です。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» つもりでした。夏の暑さはまだ先ですが蝉の声響くいのちゃんの庭を想像して書いてみました。あんな風に二人は皆に助けられ穏やかな時を過ごしているのだと思います。秋はどんな日々が待っているのだろうと想像も膨らみますね☆ (2017年6月28日 10時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年3月7日 11時

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