＊ ページ10
雄也は、運転が上手い。
無駄な動きの無い車中は快適で、信号で
停まる時だけ重ねられる左手が愛しかった。
信号が青に変わる度、律儀に離れていくその
手が名残惜しいと思う。
…
…
「到着！ 着いたよ、ちねん。」
人影の無い真夜中、冬の海岸線。
波の打ち寄せる音だけが静寂の中に響く。
空気は乾燥していて、耳の先までがキィンと
痛くなってくる。
でも、見上げた夜空はとても綺麗だった。
星には詳しく無いけれど、冬は星座が良く
分かる。
「……雄也、あれは何ていう星座？」
真上に見えた星の連なりを適当に指差す。
「えっ、どれどれ？
………俺、星座とか良く分かんないん
だよなぁ、」
頭をかいた雄也が困った様に笑った。
知ってる、知ってて聞いたの。
ほら、僕って意地悪でしょ。
可愛気が無くて、全然素直でも無いけど、
「…………今日のお仕事疲れちゃった。」
雄也の前では自分から弱音だって吐き出せて
しまうの。
「……………そっか、お疲れ様 」
雄也は、僕をそっと引き寄せて腕のなかに
しっかりと抱き寄せてくれた。
甘い香りが仄かに薫って、満たされるって
こういう事なんだなと思った。
「ちねんは、ちねんのままが良いよ。」
低めの声が優しく囁やいた。
もう、どこまでも僕に甘いんだから。
帰り道、全てを吐き出した僕はすっかり胸が
軽くなり猛烈な眠気に襲われていた。
そう言えば朝から仕事尽くめだったのだと
今更ながら気付く。
「……ゆう、や、僕寝ちゃうかもしれない」
心地好い揺られにもはや半分夢のなか。
身体がふわふわしてきた。
「うん、寝ちゃって良いよ。」
雄也の声がする。
「……着いても、起きれない、かも」
「大丈夫、ちねん小さくて軽いからベッド
まで運んであげるよ。」
…
…
「ゆぅ、や……僕、あと三日で仕事忙しい
の終わるから、
そ、したらいっぱいサービス……する
から……ね、」
何言ってるんだろう僕は。
身体だけじゃない、頭の中もふわふわして
きたみたい。
「………うん、楽しみにしてる……っ」
唇にふわりと雄也の香りを感じ、キスされ
てるんだと分かった。
重なり合った柔らかな唇が名残惜しげに離れ
ていく。
信号が青に変わったのだ。
“ ちねん、愛してるよ、”
閉じゆく目蓋が最後に映し出したのは、
ただただ優しい恋人の眼差し。
“ 僕も、雄也を愛してるよ ”
end
6. Angel´s Tale (………)→←5.ただ優しい彼(tkcn)
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ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)少しずつ書いたお話たちが一杯になりました！短いので設定もある程度自由に楽しく書いています。気になるお話があれば嬉しいなぁ思います♪私も読んで頂けて幸せです＊ (2017年10月15日 18時) (
レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - こんにちは、ぴよさん。今まで読みたい〜って思っていた場所のお話が読めて幸せです。公開ありがとうございます。 (2017年10月15日 16時) (レス) id: 291fc33caa (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - みるみるみるきーさん» グランマニエとか 笑 私たちにはやっぱり有閑倶楽部なのでしょうかね。学園ものは王道ですが間違いないわくわく感が味わえますね( ´∀｀)楽しい♪ (2017年9月22日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - ナイスですな、有閑倶楽部風味♪私もわかりましてよ。まあ、今の子なら桜蘭高校ホスト部のが浮かぶのかしら…でも、やっぱ有閑倶楽部かぁーー！みろくとせいしろうとかとか。 (2017年9月22日 13時) (レス) id: 40e0ecae06 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)まさにリクエストは有閑倶楽部風でした 笑 さすがヨウコさん！私そんなに詳しくはなくてちょっと不安だったんですがオッケ貰えて良かったです☆生徒会はやはり鉄板ですね。 (2017年9月15日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴよ
| 作成日時：2016年11月30日 0時
