＊ ページ6
「はい、これよかったら使って」
昼休み、図書室で勉強中の先輩にこっそり
手渡す贈り物。
包装紙の中には、雪の結晶をあしらったネイ
ビーのてぶくろ。
「…………くれるの？」
「先輩の手、いつも冷たくなっちゃうから
これで少しでも温かくなればって、」
俺の選んだ手袋が俺の代わりに先輩を温めて
くれたら、少しは救われるかな。
先輩に会えない間、俺はそんな事を考えて
冷たい指先を守っている気になっていた。
…
…
「……………ゆうと、待った？」
一週間ぶりの先輩は、やっぱりマフラーに
顔を埋めて小さい声で俺を呼んだ。
ふわふわとした髪も垂れた瞳もぽってりし
た唇も随分と久しぶりな気がする。
肩を並べて歩き出した俺は、相変わらずの微
妙な距離と丸まったまま指先に気が付いた。
…………あれ、先輩手袋してない、、
先輩の指先は剥き出しのまま、いつもと変わ
らず頼りなげに冷気に触れている。
今日は、特に寒いのに。
低く垂れ込める雪雲みたいに心が重くなる。
…………苦しい。
「……先輩、手袋気に入らなかった？
違う柄の方がよかったかなぁ………、」
なるべく明るく絞り出した声も最後は小さく
掠れてしまう。
やっぱり俺じゃ先輩を守れないのかな、
たかが手袋の話だけど、自分を否定された様
な不安で胸が押し潰されそうだった。
「ゆぅ、と……ちが、」
「先輩の手いつも冷たいまんま、
俺が温めてあげられないから……っ」
ごめんね、ごめんね、
ごめんなさい。
幸せにしてあげたいのに。
「 ゆ、うと……違う！！ 違うの！」
先輩が大きな声で俺の名を呼んだ。
「……昨日まで毎日付けてたの、ゆうとに
貰ったてぶくろとっても温かった。
でも、今日は一緒だから。
ゆうとがいるから、どんなに指先が冷たく
っても必ず後で温めてくれるから、
冷たければ冷たいほどゆうとが熱く感じ
られるから、 」
“あっ、雪だ！！雪が降ってきた！”
先輩の冷たい掌が俺の頬を優しく撫でた。
柔らかな唇がふわりと押し当てられたのと、
そんな歓声が聞こえてきたのはほぼ同時。
「………俺をこんなに熱くさせるのは、
ゆうとだけだよ、 」
雪が珍しい街で良かったと思う。
誰も俺達に気が付かない。
真っ赤に染まった先輩の頬。
今度は俺からキスをした。
ほら、俺達だって
“普通の恋人”になれる。
end
＊タイトルは、何となく
“新美南吉”へのオマージュでした＊
4.じぶん勝手 (tkin)→←3. 手袋を買いに(ytin)
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ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)少しずつ書いたお話たちが一杯になりました！短いので設定もある程度自由に楽しく書いています。気になるお話があれば嬉しいなぁ思います♪私も読んで頂けて幸せです＊ (2017年10月15日 18時) (
レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - こんにちは、ぴよさん。今まで読みたい〜って思っていた場所のお話が読めて幸せです。公開ありがとうございます。 (2017年10月15日 16時) (レス) id: 291fc33caa (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - みるみるみるきーさん» グランマニエとか 笑 私たちにはやっぱり有閑倶楽部なのでしょうかね。学園ものは王道ですが間違いないわくわく感が味わえますね( ´∀｀)楽しい♪ (2017年9月22日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - ナイスですな、有閑倶楽部風味♪私もわかりましてよ。まあ、今の子なら桜蘭高校ホスト部のが浮かぶのかしら…でも、やっぱ有閑倶楽部かぁーー！みろくとせいしろうとかとか。 (2017年9月22日 13時) (レス) id: 40e0ecae06 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)まさにリクエストは有閑倶楽部風でした 笑 さすがヨウコさん！私そんなに詳しくはなくてちょっと不安だったんですがオッケ貰えて良かったです☆生徒会はやはり鉄板ですね。 (2017年9月15日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴよ
| 作成日時：2016年11月30日 0時
