18.あやかしの森(ytym) ページ44
秋風さやさや吹く夜に
芒がそよそよ揺れてます
コギツネこんこん山のなか
誰を待つのかひとりきり
満月が空高く輝いていた。
秋の夜長、ひんやりとした風が吹く。
人気の消えた古い神社。
そこはまるであやかしの住む杜。
芒がそよそよとなびき、手招きをする。
迷ってはいけない、惑わされてはいけない。
少しの間雲に隠れていた月が再び姿を現して
射し込む光が境内を照らした。
ー白い狐がこちらを背にして立っているー
「………あの、」
声を掛けても返事はない。
胸元に忍ばせた懐紙を取り出す。
所謂御代を包んだそれを背中越しに差し出すと、彼はようやくこちらを振り返った。
化かすも化かされるも一夜限り、
狐の面はそんな割りきった関係を意味する。
御代を手にした彼は、くいっと顎を上げ
“いいよ”と合図をする。
簡単に収まってしまう小さな身体を抱き込ん
で、狐の面に手を掛けた。
一点の曇りも無い滑らかな白い肌
形の良い眉に深みを湛えた美しい瞳
薄く色付いた唇が僅かに開いて俺を誘う。
身体を売る事に馴れた彼は、
男を惑わす術を知っている。
そして男はかの美しさに我を忘れ
快楽を追うのだろう。
でも、
「………や、ま、俺だよ」
久しぶりに触れるその頬はあの頃と変わらず
温い。
人より高めの体温を子供の様だとからかった
あの頃と。
彼は唇を押し当ててするりと舌を差し入れて
くる。
これまでに教え込まれた手管でもって先へ先
へと俺を深淵迄引きずり込む。
もう戻れないのだと、自ら言い聞かせる様に。
この辺りを治める地主であった父の屋敷で働
く美しい少年。
幼馴染の如く一緒に育った俺達は、いつから
か互いに思い合うようになっていた。
人目を盗んで逢瀬を繰り返しながら共に生き
る未来を夢見る。
叶うはずもない夢の代償は、父の逆鱗と屋敷
からの追放。
俺は宿舎付きの学校へ、屋敷を追われたやま
は天涯孤独故他に生きる術も無かった。
白い狐の噂を聞いたのは卒業して御祓も
終わり久しぶりにこの村に帰って来た時。
「……迎えに来たんだ、」
それでもやまは止めようはしない。
言葉を全部飲み込んで、
絡めてなぞって先を求めるそれだけ。
「……やま、ごめん、ごめんね」
守れなくてごめん。
後悔なら死ぬほどしたさ。
「……ゆうと、抱いて
俺はもうこうやって生きる事しか出来
ないの」
“ごめんね”
それが最後でやまが二度と俺の名を呼ぶこと
はなかった。
闇に溶ける鳴き声と満月だけが
俺の罪を煌々と照らす夜。 ＊終＊
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ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)少しずつ書いたお話たちが一杯になりました！短いので設定もある程度自由に楽しく書いています。気になるお話があれば嬉しいなぁ思います♪私も読んで頂けて幸せです＊ (2017年10月15日 18時) (
レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - こんにちは、ぴよさん。今まで読みたい〜って思っていた場所のお話が読めて幸せです。公開ありがとうございます。 (2017年10月15日 16時) (レス) id: 291fc33caa (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - みるみるみるきーさん» グランマニエとか 笑 私たちにはやっぱり有閑倶楽部なのでしょうかね。学園ものは王道ですが間違いないわくわく感が味わえますね( ´∀｀)楽しい♪ (2017年9月22日 13時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - ナイスですな、有閑倶楽部風味♪私もわかりましてよ。まあ、今の子なら桜蘭高校ホスト部のが浮かぶのかしら…でも、やっぱ有閑倶楽部かぁーー！みろくとせいしろうとかとか。 (2017年9月22日 13時) (レス) id: 40e0ecae06 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - ありがとうございます( ´∀｀)まさにリクエストは有閑倶楽部風でした 笑 さすがヨウコさん！私そんなに詳しくはなくてちょっと不安だったんですがオッケ貰えて良かったです☆生徒会はやはり鉄板ですね。 (2017年9月15日 17時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴよ
| 作成日時：2016年11月30日 0時
